【ヒプマイ】M.T.C詰め【短編集】

【風邪】1 ページ20

「うう……なんたる不覚…!」

「病人は黙って寝てろや。」

べ、と馬鹿にしたように左馬刻が舌を出す。悔しそうな表情でベッドに寝転がるAの顔は確かに赤かった。心なしか、全体的に汗ばんでいるような感じもする。憎まれ口を叩く余裕すらあるものの、上気した頬と若干の荒い呼吸は左馬刻の不安を煽った。

おでこに手を当ててみると、確かにまだまだ熱い。左馬刻に看病されるとは思っても見なかった、とかほざいてるのを聞き流しながら、左馬刻は冷えピタを手際よく張り替える。ごろ、と横向きに寝返りをうったAは、左馬刻の顔をみてうーと言った。

「どうした。」

「…暑い。」

「布団減らすか?」

こくり、と頷いたA。左馬刻はベッドの脇から立ち上がると、ばさり、と布団をとった。汗ばんだAの体は辛そうで。ここ最近食欲が無いからと十分に取っていない食事のせいでどこかやつれているような気もした。

枚数を減らした布団をかけ直して、左馬刻はAの首もとに手を当てる。

「左馬刻の手、冷たいね。」

「テメェが熱いだけだわ。」

「…ふふ。そーかな。…気持ちいい。」

ふにゃり、と笑った表情に相反して、語尾の方はなんだか力無かった。消え入るような声になりつつ、Aは左馬刻の手を取って目を瞑る。指先に体温を感じながら、左馬刻はもう一方の手でAの頭を撫でた。

「一回寝とけ。そしたら楽になんだろ。」

「…ありがと。左馬刻。」

左馬刻は黙って隣にいた。大切な人が弱っているのを見過ごすのは、自分の中で許せなかった。眠りに落ちたAを見て、今度こそ自分で守り抜いて見せたいと思った。
もう二度と、大切な人に辛い思いなんてさせない。そう誓ったから。

再び頭を撫でると、Aが少し、笑った気がした。

◇◆◇◆
左馬刻サマって絶っっ対優しいよね。っていう妄想。

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