いや同じだよ ページ3
「ふうん。要するに、迷子ってこと?」
「ま、まさに仰る通りで」
「へえ」
いや、この温度差よ!!!
えっ、大丈夫? 君、話しかける相手間違えちゃったの? 向こうから話しかけてきたとは思えないほどの彼の無関心っぷりに、むしろ私が関心を引かれてるよ。最近の中1ってこんなにドライなものなのだろうか。
しかし、初コンタクトとはいえここで出会えたのも何かの縁。そして彼の質問に答えたということは、彼に質問をする義理が私にもあるということだ。
そういうことなので、私もまた彼に「あっ、もしかして君も迷子だったり」と彼に言われたことと同じ内容を質問した。
そうして返ってきた答えはというと、「俺は別に、迷っただけだから」なんて思わず「迷子と同じだよ!!!」と激しくツッコミを入れてしまうようなさり気ない越前くんのボケだった。クールに見えて、意外とお茶目だったりするのかな……うん、そんな感じする。
「あーあ……地図の一つでもあればこんなことにはなんなかったのに」
そして彼がボケ発言をした後にぼそりと呟いたこの言葉を、私は聞き逃すことなくしっかりと拾った。すかさず目の前の越前くんの手を取って、神にすがりつく信者の如く懇願するように私は口を開く。
「じゃ、じゃあさ! とりあえずここは利害の一致ってことで、一旦協力しない? 地図自体は持ってるんだけど、残念ながら私にはちんぷんかんぷんで……というかお願いしますマジで」
「べ、別にいいけど……とりあえず、手、放してくんない?」
「あ、ああ。ごめんごめん、馴れ馴れしすぎた」
そう言って私はすぐに彼の手をぱっと放す。
そんなわけで、ひとまず私と越前くんは初対面ながらここで一度協力をすることになった。
これは方向音痴の私にとってはかなりの大きな一歩、そして地図を読めるらしい彼はもはや神の域だ。方向音痴の身からしてみると、あの難解な図をすぐに読み解けられるなんて信じられないなんてもんじゃないもん。
「じゃ、ナビお願いしまーす」
「あのさ」
「うん?」
「名前、なんて呼べばいいのかわかんないだけど」
「あ」
越前くんという人はなかなか素直じゃない奴らしく、言い方は少し遠回しだったけど、いくらアホと言われ続けてきた私でもその言葉が一体何を示すのかは流石に理解することができた。
言われてみれば確かにそうだったなと、私はすぐに自分の名前を彼に伝える。
「水野さんね。じゃ、早くその地図ってやつ見せてよ」
年下に頼ってしまうのは少し申し訳ないが、こればかりは彼に縋る以外の術がないので私は地図を手渡した。
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かるぴん(プロフ) - 面白くて一気読みしました!続きがあったら見たいです! (2021年3月18日 16時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
織夜無 - はじめまして。作品を読ませて貰っていますが、とても面白いですね。こんな物語が書ける、いしださんが凄く羨ましいです。更新、頑張って下さい。微力ですが応援させていただきます。 (2020年4月24日 14時) (レス) id: 68fda6fa27 (このIDを非表示/違反報告)
いしだ(プロフ) - みかんですねんさん» はじめまして、コメントありがとうございます。せっかくの合宿、いろいろな学校の子たちと交流をしていく予定ですので、気長にお待ちいただけると幸いです…!テニラビはアカウント自体は持っているんですけど、最近はあまり手をつけられてないです( ; ; ) (2019年10月6日 11時) (レス) id: 67fc292324 (このIDを非表示/違反報告)
みかんですねん(プロフ) - はじめましていつも見させてもらってますプリガムレッドが好きであと光くんもすぎです光くんとの絡みを見せてください!頑張ってくださいテニラビやってますか? (2019年9月26日 14時) (レス) id: 84f3235ae9 (このIDを非表示/違反報告)
いしだ(プロフ) - 奏さん» はじめまして。笑っていただけたようでよかったです!!笑 これからも自分のペースで頑張っていきたいと思います。コメントありがとうございました! 更新頑張ります!!(^^) (2019年3月24日 10時) (レス) id: 71bf8f2eb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いしだ | 作成日時:2018年12月16日 0時