ガラクタ文庫 -薄桜鬼短編集- ２

君に向けてのluv song(沖田総司) 4 ページ30

放課後沖田は公園へ向かう。


あ、もう始まってる。


丁度１曲目が終わったところだったようだ。


「ねぇ！おねぇちゃん、あの鏡の歌やって！」


可愛いらしい子どもの声。彼女は歌だけではなくて人柄もいいんだろうな...。


少しもの寂しげにギターが歌い、それに彼女の声がかぶさる。


マジックミラー
私と貴方との間には
ガラスがはっているみたい
私からは貴方が見えているのに
貴方からは私は見えていない...


「っ？！」


ただのクラスメイトだったのに
飄々とした態度
たまに見せる笑顔
いつの間にか心奪われてた
でも君は他の子を想ってる
ずっと目で追ってたから分かるよ
時々切なそうか顔をしてるから
この想いに鍵をかけてしまいたい
でもその鍵が見つからないんだ
だったらもう打ち明けてしまおうか
...今なら言える気がするよ
貴方が好きですって...


？！


最後の歌詞、貴方が好きですと言うときに顔をあげると、目の前にいた男の子とばっちり目があって...


？！


沖田くん？！


でも手はちゃんと動いていて、後奏も弾ききっていた。


「きょ、今日はこれで終わります！聞いてくださりありがとうございました！」


拍手が聞こえてきたけど、それどころではない。


片付けを始める。顔が上げられない。恥ずかしい...沖田くんを思って作った歌を本人に聞かれるなんて...


「ねぇ...」


っ...


「あれは、誰に向けて作ったの？勘違いだったら恥ずかしいんだけど、僕だったりする？」


...う...。


「僕は君が好きだよ。」


「あ、うん。...っ、えっ？！」


Aが顔をあげる。


「ほら、君は？僕だけ言わせて君は何も言わないなんて有り得ないよね？」


うっ...意地悪な笑み...。


もう分かってるんだったら言わなくてもいいじゃない...とか思ってしまうけど...


「...好き。」


「聞こえない。」


「好き。」


「誰が誰を？」


「わ、私が沖田くんを」


「君が僕を何？」


...。


「ごめんごめん、いじめすぎた。君があまりにも可愛かったか...」


「私沖田くんが好き！！」


...あ、こんな顔もするんだ。


「...反則。」


ひっ！抱きしめられる。


...沖田くんの方が反則だと思うのは私だけだろうか。


マジックミラーだと勘違いしていたのは私の弱さ故。


夏ももう終わる。...私たちはこれから始まる。



※マジックミラー:暗い側からは明るい側が透視でき、明るい側からは透視できず鏡になるガラス。(『広辞苑』一部抜粋)

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