主のいない巣 ページ29
私が歩くこの道は、初め教えて貰った道とは違うルートで、
これから取りに行く材料への近道だそうだ。
「今から取りに行くのはね、でっかい蜘蛛の糸なんだ。そいつらはちょっと追い払えばいなくなってまた別のところに巣を張る。
簡単に手に入るし強度も十分なんだ、防具にだってなるんだ」
『蜘蛛の糸……凄いですね…』
「うん、ちょっと面倒だけどそれが一番綺麗にできるんだ。家にその道具とできた布があるから帰ったら見せてやるよ」
ジーナさんはそう笑かけてくれる。
そして私は、今だけはあの事を悩むまずにいるために。
その布はどんな感じなんだろう…そう思ったりしながら歩を進める。
でも、そんなことはできなくて
脳裏に浮かぶのはやはりあの事で、ジーナさんとの会話の間にどうしても考えてしまう。
時間はある、と彼女は言ってくれたが
あと数日であの人たちは旅立ってしまう。
「おし、この辺りだったはずだよ」
その一声で現実に引き戻される。
「一応気を付けてね、蜘蛛も弱いけど急に来るから。あたしも何回顔面に張り付かれたことか……」
そう言って、その時のことを思い出したのか苦虫を噛み潰したように顔をしかめる。
そして辺りを見回してそれらしいものを探す。
『ジーナさん、これですか？』
視界に留まったものを指差す。
それは2つの木の間に張られた大きな蜘蛛の巣。
そしてその奥を見ると1つ2つとたくさんある。
「そうそう！よく見つけたね。早速回収しよう、丁度巣の主もいないみたいだし」
待っててと私に声をかけて慣れた手つきでそれを回収していく。
その間、いつここの蜘蛛が帰ってくるかもわからない。
そっと自分の得物の感触を確かめる。
だがそんな様子はなく、周囲はとても静かで危険はなさそうだ。
「ちょっと持ってて」
不意にそう言って袋を渡される。
先程までピンと張られていた巣は丁寧に回収されていた。
そしてまた彼女は踵を返して次の巣へと取り掛かる。
私の仕事は荷物もちと見張りと言ったところだろう。
……この時なぜ私は、“静かすぎること”に気付かなかったのだろう…
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雪ごおり - (☆∀☆)メタ様カッコいいです…w頑張ってください！！ (2020年6月4日 10時) (
レス) id: a181824ba1 (このIDを非表示/違反報告)
渚 - ふくしあさん» 面白い！これだけ長く続くお話は濃いですねー (2019年7月29日 18時) (レス) id: 88dd243b5a (このIDを非表示/違反報告)
ふくしあ(プロフ) - すぴやなさん» ありがとうございます(*´ω｀*) (2018年4月2日 18時) (レス) id: 295c39c500 (このIDを非表示/違反報告)
すぴやな(プロフ) - d(´∀｀*d){ｲｲﾈ (2018年4月2日 17時) (レス) id: 55e82045e4 (このIDを非表示/違反報告)
ふくしあ(プロフ) - みつるんさん» ありがとうございます！そのように言って頂けて嬉しい限りです(*´∀｀)これを糧にこれからも頑張りたいと思います (2018年4月2日 15時) (レス) id: 295c39c500 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ふくしあ | 作成日時：2017年10月6日 16時
