降谷サン？邪魔しないでください。【降谷零／安室透】

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渡された紙を大事にポケットにしまおうと手元を見ると紙は姿を消していた。


『あれ？』


キョロキョロと床を見るもどこにも見当たらない。



ﾋﾞﾘｯ



嫌な音がして慌てて振り返る。




『…何してるの？』


「ゴミを拾ったから破いただけだ」




そう言って乱雑に自分のポケットへ突っ込むと会議室に押し入っていく。


数秒の間、ポカンと呆気に取られるもフツフツと込み上げる怒り。


どうせ会議室は完全防音。


何を言ったところで何も聞こえない。


だったら叫ばしてもらおう。




『降谷のバッキャロー！！鬼！ゴリラ！』




一通り叫んだところで、ふーっと息をつく。


ﾌﾞｰｯﾌﾞｰｯ




『誰よこんな時に』




スマホのバイブに舌打ちするも受話器マークをタップする。




『もしもし？神崎です』


「もしもし？Aさんですか？風見です」


『あ、お疲れ様です』


「今、お時間いいですか？」


『大丈夫ですよ。口うるさい上司なら会議中なので』


「……。この前、降谷さんに渡した書類なんですが少々訂正がありまして」




なるほど。
この手のことなら慣れっこだ。




『了解です。こちらで直しとくので訂正する箇所を教えてください』


「え、いや、とんでもない。私が直します」


『大丈夫ですよ。風見さんも忙しいでしょ？わざわざ警察庁まで来る暇あるなら、寝た方がいいですよ』


「ダメですよ！私が降谷さんに怒られます」


『じゃあ、怒らせときましょうってことでよろしくお願いします。来てもここまで通しませんからね』


「えっ、あの、ちょっ」





何か言いたげだった風見さんを無視して通話を終了させる。


なーに。
今更、仕事の一つや二つ増えたところで差程変わりはない。


あの忌々しい降谷が持ってきた紙くずに比べたら可愛いものである。


あぁ…思い出すとまた腹が立ってきたわ。


とりあえずココア飲んでから仕事しよ。
じゃなきゃ、捗るもんも捗らない。


漫画の一コマならルンルンという効果音でもつきそうなくらい軽快なスキップをして、気をまぎらわせながら自販機の前に行き着く。


カチッと蓋を開けて、甘い甘いココアを舌で味わい喉に流し込む。




『美味しい…』




そんな声が漏れたのはいつものことだ。
なんら問題ない。

喫茶ポアロにて茶番劇→←＊

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