250話黒木side ページ4
「家の中を調べてたんだ。あの人が急に出かけたのは金を売るためだ。さっき電話がかかってきただろ。聞いてたら、今すぐ持ってくれば金曜日の相場で買いとるって話だった。この事件に関わってから、俺も毎日金の価格をチェックしてるんだけど、金曜日は特別に高かったんだ。それにこの家の中には、俺達以外にも誰か人間がいる」
皆は相当驚いたようで、上杉はもうちょっとで紅茶を吹き出すところだったし、モシャモシャとワッフルを食べていた若武は舌を噛み、顔を歪めて呻きながら口を押さえた。
その反応からしてやはり知らないのだろうか。
「マジかよ」
「どうしてわかったんだ」
「キッチンに洗濯した男物の服が置いてあった。下着もだ」
皆は顔を見合わせ、小塚がワッフルを掴み上げながら尋ねてくる。
「黒木にはその人間の見当がついてるの」
「大体ね。これから確かめるつもりだ。小梅さんが出ていったのはチャンスだ。さぁ、はっきりさせにいこう」
俺達は一斉に立ち上がり、廊下へ出た。
階段を下りようとしたが皆が来ない。
「おい、若武っ!」
上杉の声に部屋へ戻ると、若武が床に倒れこんでいた。
「どうしたんだ。食いすぎか」
そんな中、小塚がポツリと言った。
「もしかして、アコニツム中毒かも」
本当にそうだとしたらまずい。
上杉も真剣な表情で小塚を見る。
「アコニツムって、トリカブトの仲間の?」
「そうだとしたら拮抗剤は?」
俺が叫ぶと、小塚はすぐさま自分のサイドバッグに走りよった。
「アトロビンとか。フロカインアミド、キニジンなんかだ。アトロピンを持ってきてる」
上杉が叫んだ。
「すぐやれっ!すぐ投与すればかなり効果があるって臨床結果が出てる」
小塚はサイドバッグからパックされた注射器を出しながら、不安げな目でこちらを振り返った。
「でもどのくらいな量を摂取してるか不明だから、僕が作ってきた溶液で本当に効くかどうかわからないよ。自信がない。救急車の方がいいかも」
若武は額にびっしりと冷や汗をうかべ、ハアハアと大きな息をしていた。
荒々しいその呼吸が部屋の空気を揺する。
救急車では間に合わない。
「今日は日曜だ」
苛立ちが声に出ているのがわかる。
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きょっちー(プロフ) - ゆめさん» コメントありがとうございます!次はシンデレラです。私もKZのみんなと旅行したいものです。これからもお願いします! (2019年12月6日 7時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 続きが気になります!更新頑張ってください! (2019年12月5日 19時) (レス) id: 21a29bd71d (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - RiRさん» 返信遅くなってすみません!繰り返し読んでいただいているようで、本当にありがとうございます!駄作者のことまで気にかけていただいて…。これからも応援してもらえたら嬉しいです。 (2019年12月3日 16時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
RiR - とっても素敵なお話をありがとうございますm(_ _)m気づいたら5周目ですww 応援しております。無理のない範囲で私に続きをお恵みください! (2019年12月1日 16時) (レス) id: 6882897af8 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 三毛猫さん» ありがとうございます!ただ今、新企画も企画中ですので、そちらも楽しみにしていただければ嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2019年12月1日 10時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年11月30日 15時