263話黒木side ページ17
あの緑色の綺麗な地下室を思いだす。
あそこで小梅さんは自分の夢を見ていたんだ。
「この女の子はどうやったんですか?この子が簡単に何かを口にするとは思えないんです」
「部屋に入ったなら加湿器があったでしょう?その中のお水に、夫が使ってた睡眠薬を溶かしたの」
なるほど、桜田でもケガをした状態で蒸気を避けることはできなかったということか。
「今度、あなたも看病してあげるわ」
門の方で慌ただしい足音がして、やがて玄関のドアが開き警察の人達が顔を出した。
「誰だね、通報したのは。君か。被害者はどこだ」
「この子です」
腕の中の桜田を軽く上げる。
「確かに包帯は巻いているが、眠っているしそれだけではなあ」
あまり信じていないようだ。
どうしたものか…。
その時、廊下の奥の方から声がした。
「被害者は僕です」
皆がいっせいに声の方を振り向く。
そこに若武がいて、颯爽とこちらに歩いてきた。
「毒.入りの菓子を食べさせられたんです」
まだ青い顔をしていたが、全員の注目を浴びていかにも満足そうだった。
警察官はすぐ若武に歩み寄った。
「大丈夫なのか。救急車を呼ぼうか」
若武はとんでもないというように首を横に振った。
ここで病院に担ぎこまれてしまったら、目立てないと思ってるんだろう。
「友達が応急手当てをしてくれたので、もう平気です。それより警察に行って悔しいことを話しましょうか」
警官は笑顔になった。
「ありがたい、頼めるかな」
若武は得意の絶頂だった。
「もちろんです。行きましょう。あ、その菓子を作った小梅さんにも一緒に来てもらった方がいいと思いますよ」
名指しされた小梅さんは、ちょっと困ったような顔になった。
「でも私には看病をする人が必要だったのよ」
そう言いながら俺に目をやる。
「ね、あなたならわかってくれるわよね」
縋り付くように見つめられて、俺は頷いた。
「ええ。じゃ僕と一緒に行きましょう。警察の人たちにもよくわかるように話さなけりゃなりないでしょう?」
小梅さんは嬉しそうに頷いた。
「そうね。皆に理解してもらいたいわ」
「上杉、桜田頼む」
上杉に桜田を引き渡してから、ちょっと気取って右腕を曲げ、それを小梅さんに差しだした。
「お手をどうぞ、マダム」
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きょっちー(プロフ) - ゆめさん» コメントありがとうございます!次はシンデレラです。私もKZのみんなと旅行したいものです。これからもお願いします! (2019年12月6日 7時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 続きが気になります!更新頑張ってください! (2019年12月5日 19時) (レス) id: 21a29bd71d (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - RiRさん» 返信遅くなってすみません!繰り返し読んでいただいているようで、本当にありがとうございます!駄作者のことまで気にかけていただいて…。これからも応援してもらえたら嬉しいです。 (2019年12月3日 16時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
RiR - とっても素敵なお話をありがとうございますm(_ _)m気づいたら5周目ですww 応援しております。無理のない範囲で私に続きをお恵みください! (2019年12月1日 16時) (レス) id: 6882897af8 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 三毛猫さん» ありがとうございます!ただ今、新企画も企画中ですので、そちらも楽しみにしていただければ嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2019年12月1日 10時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年11月30日 15時