248話黒木side ページ2
「この間はごめんなさいね、いきなり怒ったりして。帰ってきたばかりで疲れていたものだから、ついね。ああ、どうぞ、こちらに」
小梅さんはそう言いながら俺達を2階の部屋に案内した。
それはこの間ビンが投げこまれた部屋の隣で、中央に低いテーブルがあり、その周りにソフアが置かれていた。
「お座りなさい。今、お茶を持ってくるわ」
アーヤに話を急かすように目配せする。
アーヤは慌てて部屋を出ていこうとしている小梅さんの傍に寄った。
「あの、私達この家に入りましたが、それは本当に心配だったからです。お1人で病気で倒れたりしていたらいけないと思って。警察にも行ったんですけど相手にしてもらえなかったので、私達が何とかしなくちゃならないって考えていたんです。でも窓を壊したり床を焼いたりしたのは、誓って私達じゃありません」
小梅さんは微笑んだ。
「よくわかったわ。どうもありがとう。どうぞ、ゆっくりしていってね」
俺達はそのまま出ていく小梅さんの後ろ姿を見送った。
「いやに物分かりがよすぎないか。この間はあんなだったのにさ」
そう言ったのは上杉だった。
「こっちとしては助かるじゃないか」
若武がそう言い返した。
「とにかくよかったよ」
そこに小梅さんがワゴンに乗せたお茶セットとお菓子を運んできたので、立ちあがって傍に行き、ワゴンを押すのを手伝った。
「昨日私が焼いたの。召しあがってね」
ワゴンの上に乗っていたのは紅茶のポットとティーカップと、ワッフルだった。
葉の形の生地にクリームやジャムを包んだ日本式ワッフル。
それが山のようにトレーにのっていた。
ワッフルの中に入っているのはクリームや、色んな種類のジャムや、チョコレート。
「この紅茶はね、マルコポーロっていうのよ」
小梅さんが白いティーカップに、オレンジ色の紅茶を注ぐ。
その甘い匂いに桜田のことを思い出す。
意外に甘いものも好きな桜田がこの場にいたら、喜んだだろうか。
マルコポーロはまだ淹れてもらったことがないな。
今度頼んでみようか。
「あなたもさぁ座って」
小梅さんの言葉に現実に引き戻され、誤魔化すように微笑む。
「僕、手を洗いたいので洗面所を貸してください」
場所を教えてもらい部屋を出る。
手を洗うためではなく家の中を調べるためにね。
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きょっちー(プロフ) - ゆめさん» コメントありがとうございます!次はシンデレラです。私もKZのみんなと旅行したいものです。これからもお願いします! (2019年12月6日 7時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 続きが気になります!更新頑張ってください! (2019年12月5日 19時) (レス) id: 21a29bd71d (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - RiRさん» 返信遅くなってすみません!繰り返し読んでいただいているようで、本当にありがとうございます!駄作者のことまで気にかけていただいて…。これからも応援してもらえたら嬉しいです。 (2019年12月3日 16時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
RiR - とっても素敵なお話をありがとうございますm(_ _)m気づいたら5周目ですww 応援しております。無理のない範囲で私に続きをお恵みください! (2019年12月1日 16時) (レス) id: 6882897af8 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 三毛猫さん» ありがとうございます!ただ今、新企画も企画中ですので、そちらも楽しみにしていただければ嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2019年12月1日 10時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年11月30日 15時