293話 ページ47
そう言って電話を置き、こちらを振り返った。
「自分が自分であることを証明しなけりゃならないなんて、全く奇妙な話だがね、仕方がない」
やがてノックの音がし、ドアが開いて二十代くらいの男性が顔を出した。
「どうかしたんですか、叔父さん」
金髪で平均的な背丈のフランス人だが、どこか不真面目そうな雰囲気がある。
「ああ、カナール君」
この人が甥のカナールか。
「入ってくれ」
カナールさんは入ってきて、驚いたように辺りを見まわした。
「この子たちは?」
黒木君が進み出て、片手を差しだし握手を求める。
「僕達は寄宿学校に親善試合に来ているイレブンとマネージャー、その応援団です。街でミシアさんと出会ってお昼に呼ばれたので、お邪魔しました」
カナールさんはわかったというように頷きながら握手を交わした。
そうしていると普通の人に見えるが、目の色は完全にこちらをバカにしている。
あまり好ましくないタイプだ。
「カナール君」
ラング(仮)が困ったような口調で話しかける。
「ミシアが私をラングではないと言っているんだ」
カナールは驚いたようにミシアを見て、それからニヤッと笑った。
「ミシア、頭がおかしいんじゃないのか。病院に行ってこいよ」
瞬間ミシアがカナールに向き直った。
「わかったわ。あなたが企んだのね。知らない男をラングに仕立て上げて、メイドたちを巻きこんで、私の遺産相続を邪魔しようとしてるんだわ。警察に言いますからね」
カナールは不敵な微笑みを浮かべて頷いた。
「どうぞご自由に」
ミシアは憤然と背中を向け、電話機に走り寄った。
「もしもし、事件課のナルボンヌ刑事をお願いします」
そう言いながらカナールを睨む。
「汚い男ね」
カナールは笑い声を上げた。
「罵るのは止めてくれ。僕に言わせればあんたの方が、財産目当てで叔父に近づいた[汚い女]なんだよ」
ミシアは顔を背けて受話器を握り締め、通話口に向かって言った。
「ミシア・カミュといいます。養父ラングの事故の時には大変お世話になりました。え、ナルボンヌ刑事は出張中ですか。いつお帰りです?ま、2週間も…」
絶句するミシアを見てカナールが笑いだした。
「残念だったね。次はどうするつもりだい?」
ミシアは唇を噛み締めて考えこんでいたけれど、また受話器を取ってどこかに掛け始めた。
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きょっちー(プロフ) - ゆめさん» コメントありがとうございます!次はシンデレラです。私もKZのみんなと旅行したいものです。これからもお願いします! (2019年12月6日 7時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 続きが気になります!更新頑張ってください! (2019年12月5日 19時) (レス) id: 21a29bd71d (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - RiRさん» 返信遅くなってすみません!繰り返し読んでいただいているようで、本当にありがとうございます!駄作者のことまで気にかけていただいて…。これからも応援してもらえたら嬉しいです。 (2019年12月3日 16時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
RiR - とっても素敵なお話をありがとうございますm(_ _)m気づいたら5周目ですww 応援しております。無理のない範囲で私に続きをお恵みください! (2019年12月1日 16時) (レス) id: 6882897af8 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 三毛猫さん» ありがとうございます!ただ今、新企画も企画中ですので、そちらも楽しみにしていただければ嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2019年12月1日 10時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年11月30日 15時