29話 途中から彩SIDE ページ14
「それは有機ヒ素化合物の種類がわからなかったからだよ。ボルジア家の毒とわかれば、一発で結果の出る試薬がある。亜ヒ酸の結晶性を利用するんだ。確かに作り方が本に出ていたと思う。これから帰ってやってみるよ。材料としてはごく少ないけど、とにかくやってみる」
そう言いながら小塚君は目を上げ、夢見るような視線を空中にさ迷わせた。
「でも本当にボルジア家の毒を作ったとすれば、凄い才能だ。ボク…高柳真人を尊敬するな。きっと薬学関係に造詣が深くて、それで歴史にも興味を持ってるにちがいないよ。話してみたいな、趣味が合いそうだ。滅多にいないんだよ、そういう奴って」
うっとりと言った小塚君の背を、若武君が手早く叩いた。
「わかったわかった。とにかく帰ってその鉛筆を分析してくれ。いいな。ほら行くんだ」
追い立てられて小塚君は腰を上げ、鉛筆をバッグに入れて教室から出ていった。
「結果が出たらすぐ俺んちに連絡しろよ」
そう言って若武君はドアを閉め、皆を振り返った。
「ということでボルジア家の毒については、小塚の分析待ちだ。鉛筆からそれが出さえすれば、すべての謎は解決する。なぜならそれで高柳が彼女の受験を失敗させようとしたかどうかが明らかになるからだ。同時に高柳の復.讐の意思も、はっきりする。もしそうなら、彼はこれから梅津家の二人に手を伸ばすだろう。俺達はそれを阻止しなければならない。だが鉛筆からそれが出なければ、全てはカラ騒ぎだってことになる」
皆を見回しながら若武君は、真剣な輝きを浮かべて二つの目を底から強く煌めかせた。
「待とうぜ、結果を」
私の推測では今夜、若武君と立花さんが動くだろう。
そしてそこで本当の真相にたどり着く。
その真相は二人の心を救ってくれるだろう。
※※※
彩SIDE
その夜、私は高柳真人のマンションの前に来た。
もしかしたら若武がマンションに一人で来るかもしれないと思って、小塚君に連絡を取ったのだ。
すると鉛筆からは確かにボルジア家の毒が検出され、若武にそれを知らせたというのだ。
私は小塚君に40分経っても連絡がなかったら、警察に知らせるように頼んでここに来たのだ。
高柳真人の部屋の前まで来ると、さすがに心臓がドキドキした。
若武の姿は見当たらない。
でも絶対に来ているはずだった。
もう中に入ったのだろうか。
私はそっとドアノブに手をかけた。
ゆっくりとノブを回していくと、突然カチャリと手ごたえがしドアが弛んだ。
開いてる!
108人がお気に入り
「探偵チームKZ事件ノート」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きょっちー(プロフ) - 天愛さん» ご指摘ありがとうございます!しかしそのシーンでは原作の上杉君もアーヤと言っており、何か意味があってそう呼んでいる可能性もあるため、このままでいかせていただきます。コメントやしっかり読んでくださっているのはとても嬉しかったです。これからもお願いします! (2020年8月14日 22時) (レス) id: f1276d6d57 (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 126話の上杉が立花じゃなくて、アーヤって言ってしまってます!確認してみてください(^_^) (2020年8月12日 16時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 麗奈さん» 読んでいただきありがとうございます!夢主ちゃんにとても注目していただき、嬉しいです。ゆっくりではありますが、これからも更新していきますので、これからもよろしくお願いします! (2019年10月14日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
麗奈 - 私は、夢主のセリフがとても好きです。一歩引いた目線から考えたことがないので、さらに考えが深まりました。私は、黒木君推しなのでとても展開が楽しみです。これからも頑張って書いて下さい。 (2019年10月13日 20時) (レス) id: 2e81cd4f4c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きょっちー | 作成日時:2019年8月29日 18時