644話 ページ50
「妙な臭いがする。土や木の臭いじゃなくて、猫の体臭でもない。しかも2種類。2つとも、今まで一度も嗅いだことがないな。体に何かついてるとか?」
その瞬間、子猫が美門の腕の中で暴れ、そこから飛び降りた。
部屋を横ぎろうとして、ミント・ドレスにぶつかり、その長い裾の中に巻きこまれた。
あわててドレスを引っかいて飛び出し、開いていた窓から庭に駆けおりて木の間に逃げこんでいく。
「あーあ、しょうがないな」
美門は苦笑しながら、汚れた自分の服を払った。
「後で、コンビニからミルクと水を買ってきて、庭に出しておくよ。明日になったら、誰かに頼んで救出してもらうから」
貴和が言った。
「来た道を通って、自分で帰るかもしれないよ」
和彦は、首を傾げたままだった。
「でも、ほんとにどこから来たんだろう」
『さぁ、分からないわ。けど、コンビニのミルクは子猫には飲ませられないから、近くのペットショップで子猫用のものを買ってくるわ。だから、和臣』
「ああ、では諸君。これからカードキーを配る。それを持ってさっさと秀明に行くんだ。そしてさっさと授業を終えて、帰って、オレから出された課題に取りくんでくれ。わかったな」
押しつけるように言った和臣に、和典が舌打ちする。
「暴君」
私は真っ先にカードキーを受け取り、子猫のためにペットショップに走った。
※※※
1週間後の土曜日、和彦と貴和と共に作った曲を携えて、私たちはM&Mに集まった。
「そろったな。ご苦労、諸君」
そう言った和臣に、和彦がUSBメモリーを差し出した。
「ボクとA、黒木の間では、曲は格調を高くして気品を出すっていうことで合意したんだ」
「当然」和臣がそう言い、USBメモリーを受けとると、テーブルの上に置いた自分のノートパソコンに差しこんだ。「オレが踊る曲だからな」
『それでクラシックから選んで、アレンジしたのよ。2曲作ったから、好きな方を選んでちょうだい』「ベースにした曲は、[ハンガリア舞曲第5番ト短調]、それにバレエ曲[ガイーヌ]の中の[剣の舞]』
パソコンから、和彦の弾くピアノの音と私のサックスの音が流れ出る。
どちらも速く激しい曲で、印象的な主旋律があり、中頃にはゆっくりとした優しいメロディも入れ、そして、ラストを切って落とす。
「ハチャトゥリアンの方がいい」
和臣がそう言うと、すかさず美門も口を開いた。
61人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» もちろんです!今は少し忙しいので遅くはなってしまいますが、番外編の方にコメントしていただければ、喜んで書かせていただきます!これからもよろしくお願いしますね (2020年8月22日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 久しぶりに書かせていただきます。しばらく見ていなかったのですが、更新されていて一気に見てしまいました。また仲良くしてくださいますか?無理のない範囲でいいので、コメントやリクエストに答えてくれると嬉しいです。よろしくお願いいたします。 (2020年8月22日 18時) (レス) id: f43e9245c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 天愛さん» コメントありがとうございます!テスト等の都合でお休みはもらっても、やめることはありません。むしろ駄作者もこれどこまで続くんだろうと、先が見えてない状態なので…。なので安心して、これからを楽しみにしていただけたら嬉しいです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 早く続きが見たい!!とっても面白いのでやめたりしないでくださいね!更新応援してます!ファイトです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - メロンパンさん» コメントありがとうございます!面白いと言ってもらえる度、駄作者のモチベーションは上がっていきます。これからも、楽しんで頂けるよう頑張っていきます! (2020年8月8日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きょっちー | 作成日時:2020年8月6日 22時