641話 ページ47
和臣も初めて知ったらしく、驚いた様子だった。
美門は、少し肩をすくめる。
「そうでもない。祖父のマイケルは、フランスでフランス人女性と結婚して父が生まれて、その父が日本に留学して、日本企業に就職し、日本人女性と結婚してオレがいるから」
「それって、何て言えばいいの？」
立花さんが聞くと、皆が黙りこみ、やがて和彦が言った。
「つまり、すごくグローバルな血筋ってことで、どう？」
いいけど…。
『雑種犬』
「おまえも似たようなものだろうが」
いつも通り乱闘を始めながら美門は、壁に作り付けになっている棚を指した。
「じゃ皆、ここにバッグ置いて」
そこには、積み重ねた大きな箱が2つと、和臣や美門の秀明バッグが置かれていた。
美門は私から離れ、その箱を片手で隅に移動させる。
空箱らしく、すっと動いた。
サイドには、金色の字で[M&M]と書かれている。
あのドレスやボディが入っていたのだろう。
その脇にドサドサと秀明バッグを置いて、私たちが向き直ると、美門が言った。
「若武、説明してよ」和臣は、自分の出番とばかり、もったいぶった咳払いをする。
姿勢を正し、皆を見回してから、おもむろに口を開いた。
「諸君の協力の申し出、および友情、さらにはオレに寄せてくれている信頼に深く感謝する」
和典が、早くもウエッといったような表情を見せる。
信頼なんか寄せてないからと言いたげな顔だ。
「オレと美門で、ダンス大会の優勝を目指す。
そのためには、最高のパフォーマンスが必要だ。
ブレイク・ダンスの技はいろいろあるから、難易度の高いのを全部組みこむ予定。
頼みたいのは、音楽と衣装なんだ。
パートごとのパフォーマンスをこれから見せる。
それに合う音楽と衣装を考えてくれ。
ピアノとサックスで音をとれる小塚とAが音楽。
黒木が補佐。
審査員には女性もいるから、アーヤの感性で服をデザインして。
そのデザインから上杉が実物大のパターンを起こす。
数字に強いんだから、絵を見て、それを原寸に直していくくらいお茶の子だろ」
和典は、不満そうだったけれど、反論しなかった。
「いつまでにやるの？」
貴和の質問に、和臣がすかさず答える。
「明日まで」
「無理」
即座に、和典が投げ出した。
「できねーよ」
和臣がそばに寄り、なだめるようにその肩を抱く。
「明日を逃すと、オレたちは次の土曜日まで時間を取れないだろ」
不自然なまでに優しい言い方。
和臣お得意の話術の時間か。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 61人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» もちろんです！今は少し忙しいので遅くはなってしまいますが、番外編の方にコメントしていただければ、喜んで書かせていただきます！これからもよろしくお願いしますね (2020年8月22日 18時) (
レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 久しぶりに書かせていただきます。しばらく見ていなかったのですが、更新されていて一気に見てしまいました。また仲良くしてくださいますか？無理のない範囲でいいので、コメントやリクエストに答えてくれると嬉しいです。よろしくお願いいたします。 (2020年8月22日 18時) (レス) id: f43e9245c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 天愛さん» コメントありがとうございます！テスト等の都合でお休みはもらっても、やめることはありません。むしろ駄作者もこれどこまで続くんだろうと、先が見えてない状態なので…。なので安心して、これからを楽しみにしていただけたら嬉しいです！ (2020年8月11日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 早く続きが見たい!!とっても面白いのでやめたりしないでくださいね!更新応援してます!ファイトです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - メロンパンさん» コメントありがとうございます！面白いと言ってもらえる度、駄作者のモチベーションは上がっていきます。これからも、楽しんで頂けるよう頑張っていきます！ (2020年8月8日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きょっちー | 作成日時：2020年8月6日 22時
