警察官でした。13

640話 ページ46

美門は、丈の短い、真っ白なジャケットを着ていた。その下は、黒いドットが不規則に入った深緑色のシャツ、ズボンは黒いスキニー。

胸には白い紐のようなタイ。

顔には例のマスク。

･･･黒のスキニー被った。

「どこでも自由に使っていいって言われてるから、大丈夫だよ。奥にスタッフ用のシャワーブースもあるから、汗も流せる」

店の中は、ガランとしていた。

中央に、作業台のようなテーブルがあり、その他には、マネキンが1つ置いてあるだけ。

手足がないボディだけのものだけど。

「ああ、それ、オレがここを使わせてほしいって頼む前に、運びこまれてたんだ。撤去しようかって聞かれたんだけれど、1つくらいあってもどうってことないから、そのままにしてある」

それには、ミント色のドレスが着せられていた。

レースが全体を覆っていて、その下の生地は、艶のあるミント色の繻子。

袖は裏地のないレースで透明感があり、ウェストは絞られ、脇腹の位置に大きなリボンがついている。

そこからスカートが前と後ろに分かれ、それぞれが二重のドレープを描いて広がっているが、その部分も繻子の生地の上にレースが重ねてあり、床に届いている裾にはふんだんのフリル。

そして全体に輝く小さなクリスタルビーズと真珠が埋めこんである。

「おい、アーヤが見とれてるぞ」

「あれのどこがいいのか、わからないな」

「同感。何で、あれなんだ？人体の機能を無視した設計じゃん」

「窮屈そうだよね」

『それに重そうよ』

「ちょっとでも動いたら、絶対、どっかに引っかかるぜ。レースって穴ばっかだろ」

「あんなに裾が広がってたら、近くに寄れないし」

しかしオープン前のビルに入れるっていうのは、珍しい体験よね。

全体を改めて見回すと、奥には空中庭園があるようだ。

カフェとか出来たら、貴和と来てもいいかもしれないわね。

「この店、[M&M]って書いてあるけれど」

ウィンドーの近くで、和彦の声がした。

「オーナーは、美門の親戚って言ってたよね」

私が見ると、美門が軽くうなずくところだった。

「M&Mは、ミッキー・ミランの略。ミッキーっていうのは、アメリカではマイケルの愛称なんだ。ミッキー・ミランは、オレの祖父マイケル・ミランのこと。M&Mっていう商標を持つフォーマル・ドレスのデザイナーなんだ。ここは日本の店舗の1つ」

なるほど、クオーターね。

それでその金髪と顔立ちか。

「おまえ、4分の3日本人だったわけ？」

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