637話 ページ43
「そっちが、本音?」
貴和は、目の中に艶やかな光をきらめかせた。
「どっちも本音だね。上杉、おまえ、若武の限界に、興味ない?」
和典は、ふっと視線をそらせ、窓の外に向けた。
「まぁね」
そこにいるライバルでも見ているかのような顔つきで、挑戦的な笑みを浮かべる。
「あいつって、限界を感じさせないヤツだからな。それがあるなら、見てみたいよ」
特別クラスに入る時、彼らは気性が激しくて個性が強いと称された。
プライドが高いとも。
だからこそ、友人でありながらライバルであるという状況が継続できるのだろう。
相手を自分の友人やライバルにふさわしいか、いつも見極め続けている。
「ボクはね」
和彦が言った。
「この挫折で若武は、きっと何かを学ぶと思う。これは若武のつまずきだけれど、肝心なのは、最後にどう立ち上がるか、ってことだよ。サッカーKZや探偵KZに戻っても戻れなくても、若武が挫折前より大きくなれるように、ボクは願ってる。そのために協力したいと思うよ」
その声には、とても直向きな気持ちがこもっていた。
「賛成」
そう言った立花さんに、貴和と私がうなずき、それで4票になった。
この場での過半数だ。
「しょーがね」
和典が、あきらめたような息をつく。
「若武先生を応援するってことでいいよ。で、どうやるの」
すると貴和は、スマホを出し、中・高校生ダンス大会の応募要項を呼び出してテーブルに置いた。
「ダンス大会に出場するのに必要なのは、ダンス、音楽、衣装。この3つだ。ダンスは、若武と美門で組み立てると思うから、こちらが手伝えるのは、音楽と衣装だね。若武先生に、正式に協力を申し入れよう。そうしたら向こうから要求が出るだろうから」
スマホを操作し始めた貴和を見て、和典はケッと言わんばかりの顔で横を向いた。
「オレは反対だったって言っといてくれよな。多数決で仕方なかったんだって」
素直じゃないんだから。
「ああ若武先生」
貴和が、スマホを耳に当てながら言った。
「こちら全員一致で、おまえら2人を応援することになったから」
和典が目を見開き、私は思わず吹き出した。
「ああ、そう。わかった」
電話を切った貴和が、私たちを見回す。
「今度の土曜日、駅の新しいビルに集合だって。美門の親戚が、あそこに店を出すことになってるらしい。オープン前だから、そのスペースを練習用に貸してくれるんだって」
へぇ。
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きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» もちろんです!今は少し忙しいので遅くはなってしまいますが、番外編の方にコメントしていただければ、喜んで書かせていただきます!これからもよろしくお願いしますね (2020年8月22日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 久しぶりに書かせていただきます。しばらく見ていなかったのですが、更新されていて一気に見てしまいました。また仲良くしてくださいますか?無理のない範囲でいいので、コメントやリクエストに答えてくれると嬉しいです。よろしくお願いいたします。 (2020年8月22日 18時) (レス) id: f43e9245c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 天愛さん» コメントありがとうございます!テスト等の都合でお休みはもらっても、やめることはありません。むしろ駄作者もこれどこまで続くんだろうと、先が見えてない状態なので…。なので安心して、これからを楽しみにしていただけたら嬉しいです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 早く続きが見たい!!とっても面白いのでやめたりしないでくださいね!更新応援してます!ファイトです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - メロンパンさん» コメントありがとうございます!面白いと言ってもらえる度、駄作者のモチベーションは上がっていきます。これからも、楽しんで頂けるよう頑張っていきます! (2020年8月8日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年8月6日 22時