631話 ページ37
そうして話していると、佐田真理子がこちらを向いてきた。
「ちょっとツバサ、今、立花と何の話してたの」
[ツバサ]というのは、美門のあだ名的なもの。
クラスの子がプリントを配る時、名前をタスクと読めなくて、「美門ツバサ君」って言って、そっちの方がカッコいいとか適当な理由で、[ツバサ]呼びが定着した。
美門の人気っぷりは相変わらず、というか加速していて。
朝や帰りの校門前には、待ち伏せの女子が大勢。
バスケ部の早朝練習に合わせて、登下校する女子も多数。
講堂や体育館に行く時には、美門を一目見たい子たちが途中にある2か所のトイレに集まっている。
で、佐田真理子は恐らく過激派に分類されるであろう女子。
上手くごまかしなさいよ。
「たいした話じゃないよ」
そう言いながら美門は、手にしていたスマホをポケットに入れ、マスクをつまんでしっかりと顔にかけ直した。
「今、立花さんが話した通りだから、それでいいでしょ」
上手い。
質問には答えているけど、サラリと逃げている。
「でも人の話に首を突っこむって、あまりいい趣味じゃないぜ」
美門は大きなマスクの上から出ている目を、ふっと細めた。
「誰と何を話してたって、いいんじゃない。放っといてほしいな」
ま、正論ね。
なのに佐田さんは、目がつり上がって見えるほど怒って、怒鳴り声を上げた。
「おい美門、いい気になるなよ。そのマスク、校門待ちしてる女子に対する嫌がらせか。ちょっとモテはやされたからって、図に乗ってんじゃねぇよ。[学校裏サイト]で、たたいてやるからな」
[学校裏サイト]ってのは、インターネットのスレッドで、匿名のヤツらが学校の噂や、悪口を書きこんでいるサイトのこと。
それを使おうなんて、ずいぶん陰湿なやり方ね。
「それがいやだったら」
佐田さんはそう言って、少し笑った。
「今、その机の上に乗って、正座して謝りな。マスク、外してだよ」
美門は、しばらくの間、黙って立っていた。
…これは相当キてるな。
美門は、ゆっくりとマスクを外し、そして机に上った。
ところが机の上に立ったまま、片膝をついた。
そして片手を胸に当て、もう一方の手を上げる。
その手をゆっくりと斜めに下ろしながら優雅に頭を下げ、まるで貴公子の会釈のように美しい素振りを見せてこう言った。
「裏サイトでも何でも、どうぞお好きなように、ブタ姫様」
その言葉に、私は耐えきれず吹き出した。
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きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» もちろんです!今は少し忙しいので遅くはなってしまいますが、番外編の方にコメントしていただければ、喜んで書かせていただきます!これからもよろしくお願いしますね (2020年8月22日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 久しぶりに書かせていただきます。しばらく見ていなかったのですが、更新されていて一気に見てしまいました。また仲良くしてくださいますか?無理のない範囲でいいので、コメントやリクエストに答えてくれると嬉しいです。よろしくお願いいたします。 (2020年8月22日 18時) (レス) id: f43e9245c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 天愛さん» コメントありがとうございます!テスト等の都合でお休みはもらっても、やめることはありません。むしろ駄作者もこれどこまで続くんだろうと、先が見えてない状態なので…。なので安心して、これからを楽しみにしていただけたら嬉しいです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 早く続きが見たい!!とっても面白いのでやめたりしないでくださいね!更新応援してます!ファイトです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - メロンパンさん» コメントありがとうございます!面白いと言ってもらえる度、駄作者のモチベーションは上がっていきます。これからも、楽しんで頂けるよう頑張っていきます! (2020年8月8日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年8月6日 22時