630話 ページ36
朝、駅まで行くと、工事中だった駅の裏側のビルのシートが取れていた。
全体がメタリックで、窓枠の部分が階によって色違いになっている。
駅に直結だから色んな店が入るだろう。
窓ガラスには、まだテープが貼られているから、オープンはもう少し先かな。
学校について廊下を歩いていると、後ろから走り寄ってくる気配。
後ろを勢いよく振り向きながらカバンを振り回すと、間抜けな格好で何とか避けたらしい美門がいた。
「何するんだよ!」
『こっちのセリフよ。飛び蹴りでも企んでたでしょ』
「おまえなら避けると思ったからね。カバンは予想外だった」
そう言った美門はめずらしく、大きなマスクを着けていた。
『何よ、風邪でも引いたの?お腹出して寝てたんでしょ』
「違うよ。小塚が作ってくれたんだ」
なるほど、少しでも嗅覚を抑えられるようにってことね。
『よかったじゃない。で、調子はよさそう?』
「すごいよ。エアコンなんかのフィルターに使われている活性炭を繊維化したものだって。このマスクをかけていると、オレでも、普通の人間の嗅覚くらいになってるよ」
『へぇ、いいわね。私も作ってもらおうかしら』
「おまえいらないだろ」
『花粉症が酷いのよ』
「鼻水ダラダラ」
『否定はしない』
教室に着くと、すでに立花さんが来ていて、美門はそっちに寄っていった。
席に座って耳を澄ましてみると、立花さんも美門のマスクについて聞いていた。
「ところでKZ、最近、集合かかった?」
立花さんが首を横に振ると、美門は、ほっとしたように胸に手を当てた。
「よかった。オレだけオミットされてるのかと思ったよ」
「もう友だちになったでしょ」
「でも、KZメンバーに入れてもらえるかどうかは、また別のことだろ。集合がかかって、オレに連絡がなかったら、入れてもらえないってことだと思ってる。そうなったら、立花、オレがKZに入れるようにサポートしてくれない?」
「できるだけのことはするつもりでいるけど、でもKZの決定は多数決だから、私だけじゃなくて他のメンバーにもアピールしといたほうがいいよ」
「わかった。しとく」
そう言って立花さんの机から離れ、私の方に歩み寄ってきた。
「聞いてたんだろ。そういうことだから」
『了解。犬拾ったから飼いたいって、皆に言えばいいのね』
「それ絶対、別の意味で捉えられるだろ」
『立花お姉ちゃんのOKは出たから、順番的には貴兄、彦兄、典兄、臣兄が妥当ね』
「おまえ末っ子かよ」
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きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» もちろんです!今は少し忙しいので遅くはなってしまいますが、番外編の方にコメントしていただければ、喜んで書かせていただきます!これからもよろしくお願いしますね (2020年8月22日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 久しぶりに書かせていただきます。しばらく見ていなかったのですが、更新されていて一気に見てしまいました。また仲良くしてくださいますか?無理のない範囲でいいので、コメントやリクエストに答えてくれると嬉しいです。よろしくお願いいたします。 (2020年8月22日 18時) (レス) id: f43e9245c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 天愛さん» コメントありがとうございます!テスト等の都合でお休みはもらっても、やめることはありません。むしろ駄作者もこれどこまで続くんだろうと、先が見えてない状態なので…。なので安心して、これからを楽しみにしていただけたら嬉しいです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 早く続きが見たい!!とっても面白いのでやめたりしないでくださいね!更新応援してます!ファイトです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - メロンパンさん» コメントありがとうございます!面白いと言ってもらえる度、駄作者のモチベーションは上がっていきます。これからも、楽しんで頂けるよう頑張っていきます! (2020年8月8日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年8月6日 22時