624話 ページ30
「エレベーターが、2階から6階まで上がった。看護師の見回りが始まったんだ。そのうち、ここにも来るぞ。どこかに隠れよう」
『非常口から出ましょう』
私たちは廊下を走りぬけ、非常用扉から外に出た。
そこは、もうビルの外部で、屋上から降りてきている鉄の会談が1回まで続いていた。
下には、駅周辺の繁華街の電飾がチカチカしている。
履いてきたショートブーツの踵が鳴らないよう、じっと動かずに耐える。
そのまま私たちは、エレベーターが2階に戻ったという和典の報告が来るまで、そこで時間を過ごしていた。
「7階に上がったエレベーターが、3階に移動中だ。院長が来るぞ。諸君、スタンバイ」
私たちが非常用扉の前に並び、息をつめていると、やがてその向こうから一つの気配がした後、コツコツと足音が近づいてきた。
それが一瞬、止まり、ドアを開ける音が響く。
「入ったぞ。306号室だ」
隙間から見ていた和臣がそう言った。
「行くぞ」
私たちは非常用扉から出て、足音がしないように気をつけて廊下を歩き、306号室の前まで行った。
部屋の中は電気が点いていて、カーテンを通した明かりが廊下にもれている。
中には、眠っているだろう気配と、もう一人・・・。
「アーヤは、ここで待機」
そう言って和臣は、携帯を連写モードにし、貴和と美門、私の準備を確認した。
「ドアから飛びこんだ瞬間に写すんだ。一瞬でも遅れれば、向こうが動いちまうからな。いいか。カウントするぞ」
5から数字をカウントダウンしながら和臣は、ドアのノブをつかみ、ゼロまで数えて一気にそれを開けた。
中に飛びこんでいき、その後ろに、貴和と美門、私が続く。
「なんだ、君たちはっ?!」
院長の声が上がった。
人工呼吸器を見つけた瞬間、部屋の中の明かりが一気に消え、あたりが真っ暗になった。
これでは写真が撮れない。
出入り口の近くについていた電気のスイッチを押す。
闇の中にグローランプの紫の光が走り、パチッと音がして蛍光灯が部屋を照らし出す。
ところがすぐに、部屋の中の電気がまたも消え、あたりに闇が広がった。
「くっそ、見えねー」
和臣の声に続いて、貴和が言った。
「ベッド・ヘッドについているリモコンで、院長が操作してるんだ」
再び壁のスイッチを押すと、光が走り、部屋の中が明るくなった。
今度は消えたりしなかった。
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きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» もちろんです!今は少し忙しいので遅くはなってしまいますが、番外編の方にコメントしていただければ、喜んで書かせていただきます!これからもよろしくお願いしますね (2020年8月22日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 久しぶりに書かせていただきます。しばらく見ていなかったのですが、更新されていて一気に見てしまいました。また仲良くしてくださいますか?無理のない範囲でいいので、コメントやリクエストに答えてくれると嬉しいです。よろしくお願いいたします。 (2020年8月22日 18時) (レス) id: f43e9245c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 天愛さん» コメントありがとうございます!テスト等の都合でお休みはもらっても、やめることはありません。むしろ駄作者もこれどこまで続くんだろうと、先が見えてない状態なので…。なので安心して、これからを楽しみにしていただけたら嬉しいです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 早く続きが見たい!!とっても面白いのでやめたりしないでくださいね!更新応援してます!ファイトです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - メロンパンさん» コメントありがとうございます!面白いと言ってもらえる度、駄作者のモチベーションは上がっていきます。これからも、楽しんで頂けるよう頑張っていきます! (2020年8月8日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年8月6日 22時