623話 ページ29
「この図とエレベーターの動きを照らし合わせれば、オレたちのほしい情報が手に入る。
入院患者がいるのは、6階から3階、ナース・ステーションは2階だ。
10時になると、看護師は見回りのためにナース・ステーションを出る。
つまり2階から6階までエレベーターに乗るはずだ。
ここには書かれていないが、院長室は7階だ。
看護師が見回りを終えれば、おそらく院長に報告をする。
それを聞いた院長は7階からエレベーターに乗って、3階の老人専用棟まで動く。
それらをチェックして報告してくれ。
こんな時間に患者がエレベーターを使うことはないと思うが、もし使ったとしても、看護師や院長の時とは動き方が違うから判別できるだろ」
和典がうなずくと、和臣は、今度は美門を見た。
「美門、おまえも、これ、もう一度頭に入れておけ」
館内図を指ではじいてから、その前を通りすぎる。
「階段で行く」
そう言った和臣を、和典が呼びとめ、腕相撲でもするかのように曲げた腕を差し出した。
「健闘を祈る」
和臣は戻ってきて、和典の腕に自分の腕をからめ、ローマ風の握手を交わした。
和典がそんなことをするなんて、珍しいわね。
そう思った通りに、和典は照れくさそうにしたが、私の方にも腕を差し出した。
もちろん私もしっかり返し、自然と2人とも笑っていた。
突撃班の方に戻ると、美門が目を丸くしていた。
『どうしたのよ』
「いや・・・おまえって、あんな風に笑うんだな」
あんな風というのがわからず、貴和に目を向ける。
「いたずらっこみたいな笑顔だったよ」
ああ、まぁ学校ではしないでしょうね。
話しているうちに和臣は身をひるがえし、立花さんと貴和がそれに続き、館内図を確認していた美門と気配に敏感な私が一番後ろについた。
3階まで上って、今度は美門が先に立つ。
「老人専用病棟は、こっち」
私たちは薄暗い廊下を歩いて、老人専用病棟と書かれたドアの前に出た。
中央にまっすぐな廊下が通り、その脇に病室が並んでいる。
廊下の突き当りには、非常用出口の表示があった。
各病室のドアは、上半分がガラス戸で内側からカーテンが閉められている。
まだ電気の点いている病室もあり、そこからもれてくる光が廊下を明るく照らしていた。
和臣の携帯が一瞬、光を放つ。
そこに視線を落としてから和臣は、私たちを見回した。
61人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» もちろんです!今は少し忙しいので遅くはなってしまいますが、番外編の方にコメントしていただければ、喜んで書かせていただきます!これからもよろしくお願いしますね (2020年8月22日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 久しぶりに書かせていただきます。しばらく見ていなかったのですが、更新されていて一気に見てしまいました。また仲良くしてくださいますか?無理のない範囲でいいので、コメントやリクエストに答えてくれると嬉しいです。よろしくお願いいたします。 (2020年8月22日 18時) (レス) id: f43e9245c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 天愛さん» コメントありがとうございます!テスト等の都合でお休みはもらっても、やめることはありません。むしろ駄作者もこれどこまで続くんだろうと、先が見えてない状態なので…。なので安心して、これからを楽しみにしていただけたら嬉しいです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 早く続きが見たい!!とっても面白いのでやめたりしないでくださいね!更新応援してます!ファイトです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - メロンパンさん» コメントありがとうございます!面白いと言ってもらえる度、駄作者のモチベーションは上がっていきます。これからも、楽しんで頂けるよう頑張っていきます! (2020年8月8日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きょっちー | 作成日時:2020年8月6日 22時