616話 ページ22
「でも悪いとこあるだろ、頭とかさ」
和臣は、大声を上げた。
「なにおっ!」
あーあ、まったく。
『あのね、通院する患者に簡単にわかるような方法じゃやってないでしょうから、無駄じゃないかしら?』
美門もうなずいた。
「それにコロリといくような劇薬なんか、出せないって。今は医者が処方しても、薬を出すのは薬剤師なんだから、患者が薬局で劇薬の処方箋を出した時点で、不審を持たれる。
薬剤師を買収したとしても、その薬自体が誰かの手に渡って、保健所や警察に持ちこまれる可能性があるから、そんなこともしないと思う。
するとしたら、病院内の手当ての時だ」
和臣は腕を組み、考えこんだ表情になった。
黙ってホイップクリームの上に乗っているチョコレートソースをつついていたけれど、やがて目を上げる。
「じゃ、おとり捜査しかないじゃん。死.にたい老人を調達してきて、病院に連れていき、実際にやらせてみるんだ」
…どこからツッコめばいいのかしら。
「まず誰がやっているのかを特定したほうがいい」
貴和が言った。
「ピンピン・コロリの主犯は、誰だ?」
『院長ね。主犯が別人で、スキャンダルを隠すために払ったのだとしても、それは安楽.死を黙認していることになるわ。院長が白ということは絶対にない』
和臣が口を挟む。
「共犯がいる可能性は?」
貴和が、首を横に振った。
「ないね。これは1人でできる犯罪だし、誰かの手を借りれば、そいつが内部告発をする危険がある。おそらく単独犯だ。次に、方法も特定しておかないとダメだな。上杉先生」
貴和は手元のブラック・カフェを揺すりながら、テーブルの向こうにいた和典に視線を投げる。
「老人をコロリといかせる方法って、経口系の薬以外にどんなのが考えられる?」
和典は、その目に繊細な光をまたたかせながら、中指でメガネのフレームの中央を押し上げた。
「いろいろあるけど、司法解剖に持ちこまれたら、どうやってもバレる。
そうさせないためには、見た目に不審点が出ないようにしなけりゃならない。
経皮吸収型の薬だと、皮膚に証拠が残りやすいから、粘膜に吸収させるほうがいい。
点眼するとか、浣腸で腸に入れるとか」
「じゃ、おまえが、さ」
そう言いながら貴和は、からみつくような視線で和典を見すえた。
「自分でこれをするとしたら、どうやる?」
和典の力を試すかのような、挑戦的な感じのする眼差だった。
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きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» もちろんです!今は少し忙しいので遅くはなってしまいますが、番外編の方にコメントしていただければ、喜んで書かせていただきます!これからもよろしくお願いしますね (2020年8月22日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 久しぶりに書かせていただきます。しばらく見ていなかったのですが、更新されていて一気に見てしまいました。また仲良くしてくださいますか?無理のない範囲でいいので、コメントやリクエストに答えてくれると嬉しいです。よろしくお願いいたします。 (2020年8月22日 18時) (レス) id: f43e9245c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 天愛さん» コメントありがとうございます!テスト等の都合でお休みはもらっても、やめることはありません。むしろ駄作者もこれどこまで続くんだろうと、先が見えてない状態なので…。なので安心して、これからを楽しみにしていただけたら嬉しいです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 早く続きが見たい!!とっても面白いのでやめたりしないでくださいね!更新応援してます!ファイトです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - メロンパンさん» コメントありがとうございます!面白いと言ってもらえる度、駄作者のモチベーションは上がっていきます。これからも、楽しんで頂けるよう頑張っていきます! (2020年8月8日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年8月6日 22時