614話 ページ20
「若武、言いすぎだよ」
すると和臣は、あっさりと答えた。
「男の序列ってもんがあるんだ。黙ってろ」
和臣はそう吐き捨てて、貴和に向き直った。
「事実かよ」
貴和が、自信ありげな笑みを浮かべる。
「たぶん事実だね。で、この話は、まだ先がある」
そう言いながら部屋の隅に置いてあったゴミ袋に目を向けた。
貴和の思考がわかり、美門を抱き上げてそのまま外に出た。
『ここで少し[待て]』
「オレは犬か」
私だけ部屋に戻ると、やはり部屋には全てのゴミ袋の中身がぶちまけられていた。
「Aも手伝って」
『アレを探せばいいのね。了解』
「あったっ!」
和臣の声が上がり、顔を向けると、やはり私の想定したものがつままれていた。
幅は2センチ、長さ18センチ前後、色はベージュの薄い紙。
「これだろ?」
貴和が近づいてて、紙を手に取る。
「ん、そうだ。まだあると思う。これと同じものを探してくれ」
やがて和典と私が1枚を、和彦も立花さんも見つけた。
「よし、全部で5枚だ」
すっかり調査し終えたゴミを見ながら、貴和は満足そうに微笑み、自分の手元に集まっていた紙の中の1枚を取り上げた。
「これが、何かというと」
貴和はその紙についた4か所の折り目に沿って曲げ、紙の端と端を重ねて私たちに見せた。
それは、横が8センチ弱、縦が1センチくらいの長方形の空間を作っていた。
「帯封だ。
紙幣を、100枚まとめて束にするときに使う紙。
これは、たぶん1万円札。
ここにはそれが5枚あるから、つまり秀雄は500万円を手にしていたってことになる。
だから新しい住居に引っ越すこともできた。
北森秀雄は、仕事で斎藤総合病院に出入りするうちに、あそこの秘密を知った。
でも、それを脅して金を巻き上げるほどの度胸はなかった。
だが仕事をクビになり、父親に死なれ、それを隠そうとして必死になっているうちに下水をつまらせてしまい、罪悪感にかられて、ここで暮らしていけなくなった。
それで切羽つまって、ようやく脅迫に踏みきったんじゃないかな。
安楽.死.殺.人をバラすと言って院長を脅し、この金を手に入れた」
あの夜、院長と秀雄が密会していたのは、そのお金の受け渡しのためだろう。
「よし」
和臣が踏みきるように言った。
「KZは、これから斎藤総合病院の調査に着手する。あの病院が老人をコロリといかせているっていう証拠をつかむんだ」
「とにかく、ここから出ようぜ」
和典がため息をついた。
61人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» もちろんです!今は少し忙しいので遅くはなってしまいますが、番外編の方にコメントしていただければ、喜んで書かせていただきます!これからもよろしくお願いしますね (2020年8月22日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 久しぶりに書かせていただきます。しばらく見ていなかったのですが、更新されていて一気に見てしまいました。また仲良くしてくださいますか?無理のない範囲でいいので、コメントやリクエストに答えてくれると嬉しいです。よろしくお願いいたします。 (2020年8月22日 18時) (レス) id: f43e9245c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 天愛さん» コメントありがとうございます!テスト等の都合でお休みはもらっても、やめることはありません。むしろ駄作者もこれどこまで続くんだろうと、先が見えてない状態なので…。なので安心して、これからを楽しみにしていただけたら嬉しいです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 早く続きが見たい!!とっても面白いのでやめたりしないでくださいね!更新応援してます!ファイトです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - メロンパンさん» コメントありがとうございます!面白いと言ってもらえる度、駄作者のモチベーションは上がっていきます。これからも、楽しんで頂けるよう頑張っていきます! (2020年8月8日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きょっちー | 作成日時:2020年8月6日 22時