613話 ページ19
「黒木先生」
和臣が、貴和を振り返った。
「看護師の聞きこみは、どうなってる?」
貴和は、その艶やかな目に、不敵な感じのする笑みを浮かべた。
「びっくりの新事実がわかったよ」
皆は、いっせいに色めき立った。
「それは、何っ?!」
立花さんが叫び、皆も貴和の方に身を乗り出した。
「斎藤総合病院にまつわる噂。あの病院に知り合いの看護師がいなかったから、他の病院に勤務してる看護師に聞いて回ったんだけれど、その全員が口をそろえてこう言った。
斎藤総合病院には、ピンピン・コロリ病院って噂が立っているって」
「何だ、それ」
和臣が眉をひそめる。
和彦が、わかったというようにニッコリした。
「今って、高齢化社会だろ。
でも生まれてきた以上、いつかは死.ななきゃならない。
それで平均寿命に近づいた老人たちの一番の願いは、ピンピン・コロリ、つまり生きている間は健康で、寿命が来たらコロリと死.ぬことなんだ。
病気とかで寝たきりになったりせずにね。
家族も、それを望んでいるみたいだよ。
介護が大変だからね」
私も、どうせなら父さんたちにそうあってほしい。
介護うんぬんじゃなく、苦しんでいる姿や弱ってる姿なんて、見たくないからね。
貴和がうなずいた。
「つまり、斎藤総合病院は、その願いを叶えてくれる病院ってことだよ」
・・・・・・。
『それが本当なら大事件じゃないっ!』
勢い余って腰を上げてしまい、ゴンッと音と共に美門が落ちて頭を打った。
私と美門の時間が少し止まり、美門から目をそらして皆を見回す。
『…噂が立つくらいなら、相当な人数を扱ったはずよ』
「ごまかすな!」
殴りかかってきた美門を避けながら皆を見ると、和臣は生き生きとした顔で、立花さんはよくわかっていないようだった。
美門もそれに気づき、解説をする。
「病院って、いろんな薬を持ってるからさ、それを希望する患者に、その手の薬を与えてるってことだろ」
立花さんは、目をパチパチさせた。
「それ…たとえ本人が望んだとしても、殺.人だよね。家族が望んでるんだったら、完璧に殺.人だし」
美門は、うなずく。
「今のとこ、日本では、そういう扱いになると思うな。殺.人とか、殺.人幇助とか」
「おい、臨時雇い」
和臣が美門をにらんだ。
「法律系は、オレのテリトリーだ。口を出すな。おまえは、臭いを嗅いでればいいんだ」
美門は少し肩をすくめただけだった。
代わりに立花さんが言った。
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きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» もちろんです!今は少し忙しいので遅くはなってしまいますが、番外編の方にコメントしていただければ、喜んで書かせていただきます!これからもよろしくお願いしますね (2020年8月22日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 久しぶりに書かせていただきます。しばらく見ていなかったのですが、更新されていて一気に見てしまいました。また仲良くしてくださいますか?無理のない範囲でいいので、コメントやリクエストに答えてくれると嬉しいです。よろしくお願いいたします。 (2020年8月22日 18時) (レス) id: f43e9245c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 天愛さん» コメントありがとうございます!テスト等の都合でお休みはもらっても、やめることはありません。むしろ駄作者もこれどこまで続くんだろうと、先が見えてない状態なので…。なので安心して、これからを楽しみにしていただけたら嬉しいです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 早く続きが見たい!!とっても面白いのでやめたりしないでくださいね!更新応援してます!ファイトです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - メロンパンさん» コメントありがとうございます!面白いと言ってもらえる度、駄作者のモチベーションは上がっていきます。これからも、楽しんで頂けるよう頑張っていきます! (2020年8月8日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年8月6日 22時