610話 ページ16
トイレのタンク・レバーを回してみると、水が流れて便器に溜まり、たちまちいっぱいになってあふれ出す。
あわてて飛びのいて、トイレの外に出た。
「完璧、つまってるね。トイレと風呂場って、同じ汚水枡に流れこんでいることが多いから、もしかして、風呂場もかな」
そう言いながら和彦は、すぐ脇にあったお風呂場のドアを開ける。
そこからも、ハート虫の大群が飛び出してきた。
「ああ、やっぱ、つまってるね」
美門は、トイレのそばの壁に寄りかかったまま動かず、その顔色はもう真っ青だった。
私は、美門を横抱きで抱き上げ、2人に言った。
『庭の汚水枡が原因かもしれないわ。見てみましょう』
台所の出口から外に出て、比較的空気がきれいな所に美門を下ろした。
庭は狭く、その片隅で和彦が片膝をつき、地面に埋めこまれているコンクリートの蓋を持ち上げた。
「ああやっぱ、ここがつまってるんだ」
私は、和彦の隣まで行って、中を見おろした。
その汚水枡には、どす黒い水が溜まっていた。
「普通は、ここから下水管に流れていくんだけど、その出口がつまってるみたいだね。原因が、わかるかな」
和彦は、ナップサックを開け、中から金属の棒を取り出した。
折りたたみ式のそれを、素早く伸ばす。
長さが40センチほどになったその棒の端は、茶筅のように細かく分かれていた。
それを汚水枡に入れようとしたところで、腕をつかんで止める。
『私がやるわ。和彦と立花さんは、そこの死.にかけの犬っころをお願い』
和彦たちが汚水枡を見れない所まで行ったのを確認して、中をかき回す。
その臭いは、私でさえつらい。
棒に何かが引っかかり、静かに引き上げた。
そこにからんでいたのは、大量の髪の毛。
半分くらいは白髪で、おそらく人間のもの。
さて、ここからが問題だ。
おそらくこの中には薬品が入っている。
それに触れていいものか…。
『美門、そこからでいいんだけど、この水に腕を入れても大丈夫かしら』
美門は少し考えて、首を縦に振った。
それを見て、汚水枡に腕を突っこむ。
指の先に何か小さなものが触れ、少しつかみにくかったが、何とか引き上げる。
白くて小さな、プラスチックのようなもの。
小指の爪くらいのサイズ。
…歯だな、人間の。
引き上げたものを汚水枡に戻して、立ち上がった。
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きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» もちろんです!今は少し忙しいので遅くはなってしまいますが、番外編の方にコメントしていただければ、喜んで書かせていただきます!これからもよろしくお願いしますね (2020年8月22日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 久しぶりに書かせていただきます。しばらく見ていなかったのですが、更新されていて一気に見てしまいました。また仲良くしてくださいますか?無理のない範囲でいいので、コメントやリクエストに答えてくれると嬉しいです。よろしくお願いいたします。 (2020年8月22日 18時) (レス) id: f43e9245c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 天愛さん» コメントありがとうございます!テスト等の都合でお休みはもらっても、やめることはありません。むしろ駄作者もこれどこまで続くんだろうと、先が見えてない状態なので…。なので安心して、これからを楽しみにしていただけたら嬉しいです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 早く続きが見たい!!とっても面白いのでやめたりしないでくださいね!更新応援してます!ファイトです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - メロンパンさん» コメントありがとうございます!面白いと言ってもらえる度、駄作者のモチベーションは上がっていきます。これからも、楽しんで頂けるよう頑張っていきます! (2020年8月8日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年8月6日 22時