609話 ページ15
「北森秀雄に逃げられたのは、我が探偵チームKZにとって、痛恨の極みだ。
だが真の賢者は、どんな失敗も失敗のままでは終わらせないものだ。
そこから新しい道を見出だすんだ。
引っ越したということは、中には誰もいないということだ。
これをチャンスと考えて、利用しよう。
家に入って調査するんだ」
もうこの際、不法侵入とか言ってられない。
皆の顔にも決意が現れている。
「確かめることは、2つだ。最初の謎、下水管をなぜ掃除しなかったのか、2番目と3番目の謎、虐.待は事実か。じゃ、行くぞ」
私たちは玄関を万能キーオープンで開け、素早く中に入りこんだ。
「あ、オレ、てんでダメ」
美門が、つらそうな表情になる。
「すげぇ臭いで、気が遠くなりそう」
その胸元を和臣がつかみ寄せ、強く揺さぶった。
「臭いの発生源を探すんだ」
まるで猟犬を離す時みたいに、背中をなでてから、ドンと押す。
「さぁ、行けっ!」
美門は片手で鼻から口を覆い、決死の表情で廊下の奥に入っていった。
「小塚とアーヤ、Aは美門と一緒に行け。美門が本当に倒れたら、Aが運び出せ。上杉は、オレと来い。虐.待の証拠を見つける。床や襖についた血痕とか、柱の傷とか、タバコの焦げ跡とかだ。2階から始めよう」
階段を駆け上がっていく2人の背中に言う。
『あなたたちも、気分が悪くなったらすぐに降りてきなさい。絶対無理しないで』
美門たちの後を追うと、1階には1部屋しかなかった。
引っ越した後だから、家具もなく、ガランとしている。
隅の方には、ゴミ袋がいくつか置いてあった。
昨日の引っ越しで出たゴミか。
来週の収集日に出しに来るのだろう。
美門は、部屋を通りぬけて台所に入っていく。
ついていくと、台所も通りぬけ、その出入り口のそばにあったトイレのドアを開けた。
瞬間、そこからドッと黒紫の固まりが飛び出してきた。
それは美門を直撃し、直後に左右に分かれて、その後ろにいた私たちのそばを通りぬけた。
そのまま窓に向かい、音を立ててそこに張り付く。
よく見れば、それは、ハート虫の大群だった。
「臭いの元は、そこ」
トイレを指さしてから美門は、少し離れた所の壁に寄りかかった。
息も絶え絶えの様子だ。
手袋をつけている私が、トイレの中に入りこんで便器の蓋を持ち上げる。
濁った水が溜まってはいるけれど、そんなに多いわけではない。
『どの程度、つまっているのかしら』
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きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» もちろんです!今は少し忙しいので遅くはなってしまいますが、番外編の方にコメントしていただければ、喜んで書かせていただきます!これからもよろしくお願いしますね (2020年8月22日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 久しぶりに書かせていただきます。しばらく見ていなかったのですが、更新されていて一気に見てしまいました。また仲良くしてくださいますか?無理のない範囲でいいので、コメントやリクエストに答えてくれると嬉しいです。よろしくお願いいたします。 (2020年8月22日 18時) (レス) id: f43e9245c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 天愛さん» コメントありがとうございます!テスト等の都合でお休みはもらっても、やめることはありません。むしろ駄作者もこれどこまで続くんだろうと、先が見えてない状態なので…。なので安心して、これからを楽しみにしていただけたら嬉しいです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 早く続きが見たい!!とっても面白いのでやめたりしないでくださいね!更新応援してます!ファイトです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - メロンパンさん» コメントありがとうございます!面白いと言ってもらえる度、駄作者のモチベーションは上がっていきます。これからも、楽しんで頂けるよう頑張っていきます! (2020年8月8日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年8月6日 22時