警察官でした。13

607話 ページ13

「休日当番に当たっていなければ、夜は裏口に鍵をかけるよ。
それが開いていたってことは、秀雄が院長にアポイントメントを取ってあって、院長が開けさせておいたってことだ。
だが、親しかったり友人だったりするなら、もっとくつろげる別の場所で会うはずだろ。
かつ、訪ねるのが昼間じゃなくて、夜なのは、人目につかない時間を選んだからだ。
2人は決して親しくない。
だが、こっそり話をする必要のある関係なんだ」

「おもしろい話だけどさ」

美門が言った。

「でも、これ、動きようがなくない？だって総合病院の院長じゃ、大物すぎる。マークするにしても、行動範囲が広すぎて大変でしょ。それより会社をクビになっている秀雄を追った方がいい。彼のことをはっきりさせれば、その関連で院長の方もわかってくるはずだから」

真っ当な意見ね。

『私は賛成』

「僕も、それに賛成」

和彦が言った。

「院長の方はとりあえず放っておいて、秀雄を追おう。つまり1から3までの謎をはっきりさせるんだ」

和典もうなずいた。

「オレも、それが早道だと思う」

「私も、賛成」

それで合計5票、過半数になった。

「じゃ」

和臣は、おもしろくなさそうな顔つきだった。

美門の意見に、皆が賛成したのが不愉快らしい。

けど彼はリーダーだから、多数の意見を却下するわけにはいかないのよね。

「まず、1から3までを追うことにする」

いやいやながらそう言った和臣の前で、貴和がいつになく真剣な表情で、テーブルから体を離して脚を組んだ。

「オレが虐.待だと考えたのは、2と3によってだよ。それに」

そう言いながら、遠くを見るような目をした。

「急に同居した親子は、うまくいかないこともあるって思ってたから」

その眼差しからは悲しみがあふれている。

「でも、それ、オレの思いこみだったのかもしれない」

ゆっくりと視線を伏せたその様子は、そうすることで自分の気持ちを隠そうとでもしているかのようだった。

『…今回が当てはまらなかっただけで、そういう親子だっているわよ。逆に、血の繋がりがなくても仲のいい親子もいるしね』

少しきょとんとした貴和に、悲しみの色はもう無い。

『あなたと父さん母さんよ。本当の親子みたいじゃない』

貴和は、うれしそうに笑った。

「ありがとう。けど、これで確実なのは、アーヤが言った通り、秀雄は、なぜ、あれほど愛想が悪かったのか。自分の父親を、どうして人に会わせようとしないのか、その2つだけだ」

608話→←606話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す