605話途中から彩Side ページ11
「若武先生、これ以上は危険だ。現場での作業はここまでにして、見つからないうちに引き上げよう。締めの言葉をどうぞ。おまえが言わないんなら、オレがいってもいいけど。あ、美門に頼もうか」
和臣は、髪をクチャクチャっとかき上げながら、かなり自棄気味な口調で言った。
「諸君、この続きは明日の会議でやる。今日は、見つからないうちに引き上げだ。解散」
※※※
彩side
『立花さん、遅いから送っていくわよ』
桜田さんがそう言ってくれて、2人きりで私の家まで歩く。
ところが、人目につかない道に来た時、桜田さんが私を塀に押し当てた。
『あなた、皆に美門のことを話したそうだけど、美門からの許可は取ったの』
私は何も言えなかった。
実際、翼に話していいよって言われたわけじゃないから。
桜田さんが大きくため息をつく。
『あなたねぇ、わかってるの?美門の能力は、そうやすやすと話していいようなものじゃないの。あれだけの精密さを知ったら、必ず悪事に利用しようとするヤツが現れるでしょうし、そういうヤツらは誘拐だって平気でする。美門を守るためには、彼の秘密を知る人間は最低限に留めるべきなの』
「でも、KZの皆なら、誰かに話したりしないと思う」
桜田さんはいらだったように頭をかき、私をまっすぐに見た。
『じゃあ立花さんは、安易に美門の能力を話したせいで、美門がバケモノ扱いされるようなことになってもいいのね』
え?
『人間というのは、自分と大きく違う才能を持っている者を恐れ、迫害しようとするものよ。その扱いはとてもつらく、寂しく、やりきれないの。それは私もよく知っている。だから、美門がそんな思いをしないよう、秘密にしておくべきだったのよ』
それはなんとなくわかるけど、でも。
「桜田さんは過保護すぎるよ。そんな人ばかりじゃないはずだよ」
『あなたがそれを言うの?一度でも私をバケモノ扱いしたあなたが。あの言葉も今回のことも、あなたが実際にそんな扱いを受けたわけじゃないから、簡単に口にできたのよ』
それを言われると、何も言い返せなかった。
そんな私に桜田さんは背を向け、歩いて行ってしまった。
確かに、私の行動は軽率だったのかもしれない。
それでも、桜田さんがそこまで恐れる理由もわからない。
やっぱり私たち、見えている世界が大きく違うのかな。
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きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» もちろんです!今は少し忙しいので遅くはなってしまいますが、番外編の方にコメントしていただければ、喜んで書かせていただきます!これからもよろしくお願いしますね (2020年8月22日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 久しぶりに書かせていただきます。しばらく見ていなかったのですが、更新されていて一気に見てしまいました。また仲良くしてくださいますか?無理のない範囲でいいので、コメントやリクエストに答えてくれると嬉しいです。よろしくお願いいたします。 (2020年8月22日 18時) (レス) id: f43e9245c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 天愛さん» コメントありがとうございます!テスト等の都合でお休みはもらっても、やめることはありません。むしろ駄作者もこれどこまで続くんだろうと、先が見えてない状態なので…。なので安心して、これからを楽しみにしていただけたら嬉しいです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 早く続きが見たい!!とっても面白いのでやめたりしないでくださいね!更新応援してます!ファイトです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - メロンパンさん» コメントありがとうございます!面白いと言ってもらえる度、駄作者のモチベーションは上がっていきます。これからも、楽しんで頂けるよう頑張っていきます! (2020年8月8日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年8月6日 22時