596話 ページ2
『私たち、秀雄さんにとてもよくしていただいていたので、引っ越した後どうしているのか心配なんです。それで、様子を見に来たんです。あんな事件もあったし…』
少し悲しげに眉を下げると、女性ははっとしたような顔になった。
「あんな事件って、何?」
美門が周りを見回してから、女性の耳に唇を寄せる。
「秀雄さん、会社の品物を隠匿して、売りさばいたって疑いがかけられたんです」
女性は、目を見開いた。
私は目に涙を浮かべる。
『でも、秀雄さんがそんなことするわけありません。いつも私たちに声をかけてくれて、とても優しい人なのに…』
ついに涙が頬を伝った私を慰めるように、美門が私の両肩に手を置いた。
「その後すぐ引っ越してしまったので、僕たち、もう心配で。秀雄さんの様子は、どうですか。なにか変わったこと、ありませんか」
女性はうなずき、今度は自分から私たちに唇を寄せた。
「お父さんの啓太郎さんの方は、心臓が悪くてね、1人暮らしだったものだから、うちも気にしてたのよ。
でも、息子さんが引っ越してきて、挨拶に来てね、それからは安心してるの。
変わったことなんか何もないわよ。
息子さんは働いてないみたいで、毎日、家にいるけど、静かな人で声一つ上げないし、ガンガン音楽を鳴らすなんてこともないし。
親子仲もよくて、よく啓太郎さんに付き添って病院に行ってるしね。
ついこの間も、スーパーで2人で買い物してたから、声をかけたら、啓太郎さん、言ってたわよ。
息子が来てくれて助かってますって。
うれしそうだったわ。
その後は会ってないけど、まぁ私も、見張ってるわけじゃないからね。
救急車が来るとか、急いで病院に連れていくなんてことがあれば、すぐわかるんだけど、それもないし、まぁ元気なんじゃない?」
美門は、再び微笑んで頭を下げた。
「ありがとうございました。ほら、おまえもこれで安心だろ」
『うんっ』
私たちは寄り添って歩き出す。
後ろから女性の大きなため息が聞こえた。
「まぁ、きれいな子たち。ああいうのを、イケメンと美女っていうのね、きっと」
私たちが門を曲がった所で止まると、立花さんも後を追ってきた。
美門を見ると、その顔は完全に固まっている。
「どうしたの」
美門は、真剣な目で、私と立花さんを見た。
「オレ、今、必死だった」
見れば、額から米神にかけて冷や汗がにじんでいる。
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きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» もちろんです!今は少し忙しいので遅くはなってしまいますが、番外編の方にコメントしていただければ、喜んで書かせていただきます!これからもよろしくお願いしますね (2020年8月22日 18時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 久しぶりに書かせていただきます。しばらく見ていなかったのですが、更新されていて一気に見てしまいました。また仲良くしてくださいますか?無理のない範囲でいいので、コメントやリクエストに答えてくれると嬉しいです。よろしくお願いいたします。 (2020年8月22日 18時) (レス) id: f43e9245c3 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 天愛さん» コメントありがとうございます!テスト等の都合でお休みはもらっても、やめることはありません。むしろ駄作者もこれどこまで続くんだろうと、先が見えてない状態なので…。なので安心して、これからを楽しみにしていただけたら嬉しいです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
天愛 - 早く続きが見たい!!とっても面白いのでやめたりしないでくださいね!更新応援してます!ファイトです! (2020年8月11日 15時) (レス) id: 74d4bab595 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - メロンパンさん» コメントありがとうございます!面白いと言ってもらえる度、駄作者のモチベーションは上がっていきます。これからも、楽しんで頂けるよう頑張っていきます! (2020年8月8日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年8月6日 22時