9話 ページ9
『飲んではダメよ!』
会場前方から、少女の叫び声が上がった。
会場の人たちがそちらを向くと、黒髪の美しい少女が凜とした瞳で立っていた。
『申し訳ありません、王子様。しかしそのワイン、注いでくれたその人に、味見してもらってくださいません?』
少女の言葉に、キースががメル王子を守るように抱き寄せる。
会場の後方から男性の声が聞こえた。
「誰かそいつを…」
その声の方向には上半身の服を脱がされた、おそらく本物のソムリエが頭を擦っていた。
「そいつを捕まえてくれ!」
キースがSPに指示を飛ばす。
「押さえろ!」
男はカートを蹴り倒し、逃げようと走り出す。
「厨房だっ!外の出口を、うわっ!」
SPは人の波に巻き込まれ、上手く動けない。
「皆さん、落ち着いて!走らないで、危険です!」
人が走り逃げるなか、紫のドレスを身にまとった金髪のサングラスの女性は、優雅に歩いて会場を去った。
「退けぇっ!」
男がナイフを出し、少女に向かっていく。
しかし少女はナイフを持った腕を脇に挟み込み、黒髪をなびかせながら男を床に押し倒した。
腕が無理な方向に曲がった男はうめき声を上げる。
『女の子だからって、甘く見ないことね』
人の波から抜け出せたSPたちが、改めて男を拘束した。
※※※
サクラサクホテル会議室。
連絡を受けた目暮警部と高木刑事が来ていた。
私は毛利さんと一緒に、会議用の椅子に座っていた。
高木刑事が捜査の結果を報告していく。
「王子のワインからは、致死量の毒物が発見されました」
その報告に、目暮警部は不満げに若い男性…キースさんに言葉をもらす。
「Mr.キース。サプライズも結構ですが、我々にも内緒では、警備の仕様がありません」
キースさんは一面ガラス張りの大きな窓の方を向き、つまりこちらには背を向けたまま言った。
「王家のSPだけで、十分だと判断したもので」
「十分?厨房まで人が回らない警備で?」
「高木君」
「あらかじめ、王子にはパーティーの飲み物も食事も手をつけないよう、打ち合わせてありました。ですが、」
キースさんが、私の方に少しだけ顔を向けた。
「あなたには、お礼を申し上げる」
※※※※
ロイヤルスイートルーム。
ソファには、メル王子が顔を伏せて座っていた。
「メル様?」
メイドがその前に、水の入ったグラスを置く。
「嫌だっ!」
メル王子は反射的に、そのグラスをなぎはらってしまった。
メイドが慌ててグラスを回収する。
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月(ユエ)(プロフ) - はじめまして✨警察官でしたシリーズ、全て読みました!もしかしてシリーズ14以降は執筆しない予定ですか?とっても面白い話なのでもっと見てみたいなというのが本音です。私も小説を書いたりするので、書き方とても参考になりました!ありがとうございます!(´▽`) (4月20日 15時) (レス) id: 554e8a3ec4 (このIDを非表示/違反報告)
あんな - はじめまして!警察官でしたシリーズ、とても面白くて1日で読破してしまいました!私も黒木くん大好きです!我慢しすぎちゃう桜田ちゃんと心配して怒る黒木くんが最高です!これからの黒木くんとの恋模様、楽しみにしてます! (2021年3月10日 19時) (レス) id: 8be13c14ce (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 華菜原 舞衣さん» すみません!忘れていただけで、ルパコナ1は終わっています。2は展開的に書けるようならいつか書ければ…という感じです。しかし、コナンコラボは続きます。今も執筆中ですので、そちらを楽しみにしていただければ嬉しいです! (2020年7月5日 21時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
華菜原 舞衣 - 続く・・・って、完結じゃ、ないんですか?まだ続くのなら、楽しみにしています。 (2020年7月5日 17時) (レス) id: daa172df0e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます!私も書いてみたいお話だったので、とても楽しかったです。最後がおかしくなってしまいしたが…。またお気軽にコメントしてください! (2020年6月21日 20時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年6月21日 12時