警察官でした。〜ルパン三世VS薊の少女〜

50話 ページ50

『私もおじ様に一つ聞いていいかしら』

「ん？」

『まだおじ様の名前、聞いていないのよ』

「そうだったっけ？オレの名は、ルパン三世」

※※※

メル王子が眠った車の中で、キースさんが私の方に体を向けた。

「今回の件、本当にありがとうございました。恋人も巻き込んでしまったというのに」

『いいえ。というか、私と貴和の関係…』

「見てしまったので。昨日、水の中で」

ああ…。

キースさんは笑いながら息をついた。

「むしろよかったです。諦める理由ができましたから」

…なるほどね。

『そうですね。ごめんなさい。私は彼が大切だから』

王宮に着いたので、私はドアを開けて振り返った。

『でも、東屋でのあの宣言、カッコよかったですよ』

キースさんは軽く目を見開いて、ふっと笑った。

「その言葉、思い出にしておきます」

※※※

戴冠式当日。

正装したメル様は、椅子に腰かけながら私たちと向き合っていた。

「あなたたちには、心から感謝します。本当にありがとう。貴和、あの夜は楽しかったよ。貴和のおかげだ」

「いえ、僕も貴重な体験をさせていただきました。惚れ直させることも、出来たようですし」

私は少し気恥ずかしくて、少し目線をずらした。

「メル様、お時間です」

そこからは戴冠式があり、そのままパレードが始まった。

メル国王を乗せた車が去っていき、私は自販機に向かって歩き出した。

すると、後ろから気配。

人のいない細道に入って振り返ると、ルパンさんが立っていた。

『何か私に用？』

「まぁな。オレも、ちゃんと嬢ちゃんの名前、聞いてなかったと思ってなぁ」

『あら、そう言えばそうね』

私はおじ様に歩み寄ってそのまま横を通り、大通りに出たところで振り返った。

『KZリサーチ事務所所属の、桜田A。薊の少女よ。今度泥棒してたら、捕まえるわよ』

体の向きを変えて自販機へと向かう。

細道からおじ様の笑い声が聞こえてきた。

※※※※

ルパンが車に戻ると、次元がタバコを吹かして待っていて、ニヤリと笑いながらルパンを見た。

「どうする、ルパン。今度会ったら捕まっちゃうぞ」

ルパンは笑い混じりに答えた。

「バカおっしゃい」

そう言ってビデオカメラを取り出し、自販機の前で撮った写真を呼び出す。

モニターにAの姿が写る。

いつでも攻撃できる姿勢で、凜と輝く灰色の瞳。

「薊の少女、か…」

ルパンはボタンを操作し、その写真をお気に入りに加えた。

終わり ログインすれば
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