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44話 ページ44

「日本のお坊ちゃんのこと、ご存じでしたか」

ジラードは焦ったように、顔を反らしながらしどろもどろに言う。

「あ、ああ。SPの誰かがしゃべっているのを聞いたかな」

「すみません、勝手に王宮に連れてきてしまいました…。誰にも知らせずに」

キースさんの言葉に、ジラードは小さく笑った。

「そうか、そういうことか」

私はとりあえず話を続ける。

『じさつされたジル王子が、拳銃を持たれていた手は右手。右のこめかみを撃たれていたんです。右に持つのは当然です。…そうですか?メル王子』

王子は目線を真っ直ぐ前に向けたまま答えてくれた。

「兄は…、左利きだ」

その言葉に、ジラードがわずかに反応する。

『ふぅん、ということは、誰かが拳銃を間違えて握らせた。何故、王子は右利きだと思われたのでしょう。私は、サクラ女王の部屋で王子の写真を拝見ました。幼い頃の、野球をされている写真です。グローブを右に着けておられました』

「兄は小さい時から、食事もサインをするのも右でするよう、教えられていたんだ」

『なるほど。次期国王となる立場ともなれば、色々あるのでしょう。カイルさん、その時の猟銃、持ってきてくださっていますよね』

カイルさんは持っていた猟銃を、胸の高さまで掲げた。

「はい、ここに。持ってくるよう指示してくださったので」

カイルさんが歩み寄ってきて、私に渡してくれる。

『王子とジラード公爵が使われていた銃は同じ物です。ボルトアクション式のライフルは、特注品でもない限り、左利きでも右で構えるしかないのです。何故なら、弾を装填するボルトは右にしか付いていません』

そう言って私は、実際にボルトを引いて見せた。

この感覚、やはり…。

目線をはっきりとジラードに向ける。

『ジラード、あなたはそこに引っかかったわね。直前まで右手でライフルを構えていた王子を見て、あなたは何の疑いもなく、右手に拳銃を握らせたのでしょう?』

メル王子が震えた声でつぶやく。

「本当に、叔父様が?」

ジラードは大げさに肩をすくめた。

「何を言い出すのかと思えば…。その少女は、どうしても事件にしたいらしい。どうしたものでしょうな」

銭形警部が、おじ様扮する毛利さんにささやく。

「毛利くん、あの子を止められないのか」

おじ様は笑って答えた。

「いや、これからがおもしろいんだって、とっつぁん」

…往生際が悪いヤツには、お灸が必要よね。

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月(ユエ)(プロフ) - はじめまして✨警察官でしたシリーズ、全て読みました!もしかしてシリーズ14以降は執筆しない予定ですか?とっても面白い話なのでもっと見てみたいなというのが本音です。私も小説を書いたりするので、書き方とても参考になりました!ありがとうございます!(´▽`) (4月20日 15時) (レス) id: 554e8a3ec4 (このIDを非表示/違反報告)
あんな - はじめまして!警察官でしたシリーズ、とても面白くて1日で読破してしまいました!私も黒木くん大好きです!我慢しすぎちゃう桜田ちゃんと心配して怒る黒木くんが最高です!これからの黒木くんとの恋模様、楽しみにしてます! (2021年3月10日 19時) (レス) id: 8be13c14ce (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 華菜原 舞衣さん» すみません!忘れていただけで、ルパコナ1は終わっています。2は展開的に書けるようならいつか書ければ…という感じです。しかし、コナンコラボは続きます。今も執筆中ですので、そちらを楽しみにしていただければ嬉しいです! (2020年7月5日 21時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
華菜原 舞衣 - 続く・・・って、完結じゃ、ないんですか?まだ続くのなら、楽しみにしています。 (2020年7月5日 17時) (レス) id: daa172df0e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます!私も書いてみたいお話だったので、とても楽しかったです。最後がおかしくなってしまいしたが…。またお気軽にコメントしてください! (2020年6月21日 20時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年6月21日 12時

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