警察官でした。〜ルパン三世VS薊の少女〜

40話 ページ40

「今の今まで…、気のせい？」

そして今度は、黒木が別の入り口から、中に向かって声をかける。

「A、毛利さん」

Aと毛利は、その声の人物に疑いの目を向ける。

『貴和…ですよね？私、今少し自信無くて…』

「気を付けろ。ここで間違えたら後が恐いぞ」

その2人の様子に、黒木は冷たく言い放つ。

「…ナスのフルコース、ドーナツクッション」

途端、Aが猫なで声で叫んだ。

『貴和っ！』

黒木は返ってきた制服のズボンのポケットに手を入れながら、怒った様子で大股で廊下を歩く。

「信じられないね。いつもの観察力、日本に置いてきたんじゃないの」

その後ろをAと毛利が小走りで追いかけていった。

『貴和、怒らないでちょうだいよ〜！』

トレーに湯気の上がったコーヒーを乗せ、メイドが銭形の元へやって来た。

「コーヒーお持ちしました」

「どうも。君は残ったんだ？」

「はい。私とシェフの2人だけです」

笑顔でそう答えたメイドに、銭形は少しだけ申し訳なさそうに返す。

「すまない。もう少しの間だけですから」

その長いテーブルの下に、ルパンと次元は隠れていた。

「何でとっつぁんがここにいるんだ？」

「知るわけないでしょぉ」

「あのアマだな」

「それはないんじゃないかなぁ。では、役者もそろったし、行動開始といきますか」

そう言ったルパンの顔には、不適な笑みが浮かんでいた。

※※※

貴和に連れられて訪れた一室。

そのドアの前で、貴和がノックをして声をかける。

「メル王子？」

中から、そのメル王子の声が返ってくる。

「開いてるぞ」

「失礼します」

貴和が開けたドアの先は、大きな天蓋付きのベッドがある豪華な部屋だった。

「2人、連れてきました。本当によろしかったのですか？」

メル王子は椅子に座って足を組んでいる。

「構わない。ここが母の部屋だ。何もかも、亡くなった時のまま。誰にも触らせていない。捜査するんだろ。協力するぞ」

事件ファイルを持った毛利さんが答えた。

「じゃ、遠慮なく」

「けど、笑っちゃうよな。母と兄を殺したのは叔父で、その証拠探しを手伝うなんて。呪われたんだ、この国は。あの石ころに」

メル王子はそう、忌々しそうに吐き捨てた。

「メル王子…」

私は棚に置かれた写真を見ていった。

この写真は…。

その時、ふと天板が折り畳み式の机の汚れが目に入った。

指でぬぐってみると白い粉が付着したから、匂いを嗅いでみる。

これは…。

41話→←39話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す