警察官でした。〜ルパン三世VS薊の少女〜

3話 ページ3

ジラードはハンチング帽を取り、苦々しげに言った。

「止める、暇もなかった…」

ジル王子の右手には拳銃が握られ、2枚の桜の花びらが乗っていた。

※※※

私と貴和はリビングでサッカー中継を見ていた。

『うまい戦略ね。今度の試合に活かせないかしら』

「無理だろ。若武が我慢できずに飛び出していくよ」

『やっぱりそうよね…』

その時、激しい音ともに画面の上に文字が出てきた。

[ニュース速報 ヴェスパニア王国のサクラ女王とジル王子が事故.死]

そして画面が切り替わり、アナウンサーが映った。

【サッカー中継の途中ですが、臨時ニュースをお知らせします。現地時間の午前10時20分頃、ヴェスパニア王国で、サクラ女王とジル王子が、猟銃事故で死.亡しました。繰り返します。ヴェスパニアのサクラ女王とジル王子が死.亡しました。ヴェスパニア王国では、未知の鉱石が発見されたことで、世界中から注目を浴びています】

猟銃事故…？

※※※※

1台の飛行機は現在、就寝時間で客室の証明が落とされている。

その1席に青いシャツに黄色のネクタイ、赤いスーツに白いズボンの猿顔の男が、頭の後ろで両腕を組みながら座っていた。

飛行機は無事に着陸したが、税関に猿顔の男は来ず、同じ服装のメガネの男が通っていった。

しかし男がトイレで顔を洗うと、その顔は猿顔の男のものになった。

その男は、変装の名人なのだ。

男は空港…、ヴェスパニア国際空港を出た。

この男こそ、世紀の大泥棒、ルパン三世である。

※※※※

7日後。

ヴェスパニア王宮で、ジラードと1人の若い男性が廊下を歩きながら話していた。

「来賓を招いての崩御の式は、1か月後に行うことにしました」

若い男性は、ヴェスパニア王国伯爵のキース・ダン・スティンガー。

20代後半ぐらいでジル王子より暗い金髪の、ハンサムな人物だ。

「今回のような事故では、それも仕方ないだろう。私が付いていながら、最悪だな…。せめて、第二王子のじさつは、止めなくてはな…」

「全ては起きてしまったこと。あまりご自分を責めずに、これからのことを考えましょう」

キースはそう言ったものの、気づかれないようにジラードを厳しい視線で見ていた。

「そう言ってもらえると、助かる。メル王子の様子はどうだ」

「相変わらずです。国王になどなりたくないの、一点張りで」

歩き続け、ついに廊下からバルコニーへと出た。

「母親と兄を一度に亡くしたんだ。無理もないか。しかも…、あれではな」

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