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2話 ページ2

車に戻っていくサクラ女王の背中に、ジル王子は不満げに言った。

「いいじゃないか、王子。ここは男同士、サシの勝負といこう」

ジラードはジル王子に歩み寄り、その耳にこっそりと言う。

「狩猟の楽しみは、男でないと」

「聞こえましたわよ」

サクラ女王の鋭い指摘に、ジラードは笑うしかない。

「いやっ、これは、これは」

そんな叔父を、ジル王子は笑って見ていた。

※※※※

森の中、ジラードは猟銃を手に獲物を探していた。

ジル王子は茂みから顔を出すと、木の下で穴を掘っているキツネを見つけた。

木の陰に隠れ右手でボルトを引き、弾が装填されるその感覚に少し笑う。

片目をつむり、キツネに照準を合わせて右手でトリガーを絞った。

大きな銃声が鳴るが、キツネは飛び上がり、倒れることなく走り去ってしまった。

しかし、ジル王子は弾が当たらなかったにも関わらず、優しく微笑んでいた。

※※※※

森の中にある小高い丘、そこには大きな桜の木がたくさんの花をつけていた。

サクラ女王はその木の下まで来て、嬉しそうにその花を眺めていた。

その時、近くの茂みから音がして、キツネがひょっこりと顔を出してきた。

サクラ女王はキツネの方を向き、少し厳しい声を出した。

「ここにいてはいけません。さぁ、早く、お逃げなさい」

一際大きな風が吹き、キツネが耳を動かしながら別の方向を見た。

桜の枝に何かが当たり、その場所が折れ、先を失った枝は焦げてしまう。

サクラ女王は、自分の胸に衝撃を受け倒れてしまった。

キツネは走り去り、折れた小さな枝はサクラ女王の頭の上に落ちた。

その枝には、一輪の花と一つのつぼみがついている。

桜の木の向こうからジル王子が歩み寄ってきた。

「…お母様?」

サクラ女王のその姿から、命の花が摘み取られてしまったことを悟る。

思わず膝をつき、その顔を両手で覆う。

「そんな、嘘だっ、嘘だぁぁぁっ!」

小高い丘にジル王子の絶望の叫びが響く。

それを見ていたジラードは、ポケットから取り出した無線でSPに連絡を取る。

「至急来てくれ!急げっ!」

ジラードの連絡を受けたカイルは、素早く部下に指示を回す。

「はいっ、おまえは車の用意!」

桜の丘に走る途中、もう一度銃声が聞こえた。

丘に着いて見たのは、倒れているサクラ女王と、桜の木の根本に座り込み、命の花を折ったジル王子の姿だった。

足には猟銃が置かれている。

「ジラード公爵っ!」

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月(ユエ)(プロフ) - はじめまして✨警察官でしたシリーズ、全て読みました!もしかしてシリーズ14以降は執筆しない予定ですか?とっても面白い話なのでもっと見てみたいなというのが本音です。私も小説を書いたりするので、書き方とても参考になりました!ありがとうございます!(´▽`) (4月20日 15時) (レス) id: 554e8a3ec4 (このIDを非表示/違反報告)
あんな - はじめまして!警察官でしたシリーズ、とても面白くて1日で読破してしまいました!私も黒木くん大好きです!我慢しすぎちゃう桜田ちゃんと心配して怒る黒木くんが最高です!これからの黒木くんとの恋模様、楽しみにしてます! (2021年3月10日 19時) (レス) id: 8be13c14ce (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 華菜原 舞衣さん» すみません!忘れていただけで、ルパコナ1は終わっています。2は展開的に書けるようならいつか書ければ…という感じです。しかし、コナンコラボは続きます。今も執筆中ですので、そちらを楽しみにしていただければ嬉しいです! (2020年7月5日 21時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
華菜原 舞衣 - 続く・・・って、完結じゃ、ないんですか?まだ続くのなら、楽しみにしています。 (2020年7月5日 17時) (レス) id: daa172df0e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます!私も書いてみたいお話だったので、とても楽しかったです。最後がおかしくなってしまいしたが…。またお気軽にコメントしてください! (2020年6月21日 20時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年6月21日 12時

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