1話 ページ1
金網で囲まれた森に、4台の黒い車が入っていく。
どの車も重厚な作りだが、特に高級な車のボンネットには2本の小さな国旗が上げられている。
その国旗はヴェスパニア王国のものであり、この場所も王家私有林である。
国旗の上げられた車を守るように他の3台が止まり、黒いスーツのSPが2人ずつ下りてきた。
SPたちはトランシーバーで連絡を取り合っている。
「A地点に到着。これから開始する」
「以上なし。各班、位置に着きました」
SPの1人が国旗の車のドアを開けると、ハンチング帽を被り口元にひげを生やした40代ぐらいの男が出てきた。
ヴェスパニア王国公爵の、ジラード・ムスカ・ヴェスパランドである。
反対側のドアからは、金の髪に青い瞳の美しい青年が下りてきた。
ヴェスパニア王国第一王子、ジル・カウル・ヴェスパランド、彼もハンチング帽を被った狩猟スタイルだ。
SPがまた別の車の、観音開きになっているトランクを開けた。
そこには2丁の猟銃がチェーンをかけた台にかけられていた。
猟銃を取り、SPのリーダーであるカイルに手渡す。
カイルもまた、その銃をジラードに手渡した。
ジラードは猟銃のボルトを引きながら、そのSPに言う。
「おまえたちは、ここで待機していてくれ。大勢で行くと、獲物が逃げてしまうからな」
SPの1人が猟銃の弾が詰められた箱を持ち上げた時、1人の女性が別の車から出てきて声をかけた。
「それは、私が」
その女性は清楚なスーツワンピースを着た、ジラードより少し年上の美しい人だ。
ジル王子が手にした猟銃をいじって、調子を確かめているのを見て、ジラードは話す。
「使い方は教えた通り。覚えていますね」
「ええ、完璧ですよ。あ、忘れた方がよかったですか」
ジル王子の少しふざけた言い方に、ジラードは笑って返す。
「できれば、その方がありがたい」
そのジラードの後ろから、女性が弾の詰められた箱を差し出した。
「これを」
ジラードはハンチング帽を軽く指で上げ、女性の方を向いた。
「これは…。陛下自ら、申し訳ない」
「お母様、本当にご一緒にはいらっしゃいませんか」
女性はジル王子に歩み寄り、同じように箱を手渡す。
「私は結構です。狩猟などという野蛮なものは、好きではありません」
その女性こそ、ジル王子の母親であり、ジラードの実姉でもある、この国の女王。
サクラ・アルディア・ヴェスパランドである。
「野蛮だなんて…。狩猟は、れっきとしたスポーツですよ」
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月(ユエ)(プロフ) - はじめまして✨警察官でしたシリーズ、全て読みました!もしかしてシリーズ14以降は執筆しない予定ですか?とっても面白い話なのでもっと見てみたいなというのが本音です。私も小説を書いたりするので、書き方とても参考になりました!ありがとうございます!(´▽`) (4月20日 15時) (レス) id: 554e8a3ec4 (このIDを非表示/違反報告)
あんな - はじめまして!警察官でしたシリーズ、とても面白くて1日で読破してしまいました!私も黒木くん大好きです!我慢しすぎちゃう桜田ちゃんと心配して怒る黒木くんが最高です!これからの黒木くんとの恋模様、楽しみにしてます! (2021年3月10日 19時) (レス) id: 8be13c14ce (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 華菜原 舞衣さん» すみません!忘れていただけで、ルパコナ1は終わっています。2は展開的に書けるようならいつか書ければ…という感じです。しかし、コナンコラボは続きます。今も執筆中ですので、そちらを楽しみにしていただければ嬉しいです! (2020年7月5日 21時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
華菜原 舞衣 - 続く・・・って、完結じゃ、ないんですか?まだ続くのなら、楽しみにしています。 (2020年7月5日 17時) (レス) id: daa172df0e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます!私も書いてみたいお話だったので、とても楽しかったです。最後がおかしくなってしまいしたが…。またお気軽にコメントしてください! (2020年6月21日 20時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年6月21日 12時