552話彩side ページ8
若武はムッとしたように言い、テーブルを回って私のそばまで歩いてきた。
「おまえさぁ、砂原にチョコレート渡すつもりだったって言ってたよな。バレンタインって、オレたち男にとっては、チョコレート集め競争みたいなとこがあるけど、女はそこそこ真剣なんだろ。真剣なら、砂原のこと信じてやったらどうなんだ。好きって、そういうことじゃないのか」
私は胸を突かれ、息ができなかった。
それは、確かに本当のことだったから。
好きだっていうことは、その相手を信じることができるってこと、自分の内に、相手を信じることができる力を持つってことなんだ。
それは、私にもわかっていた。
でも、それって、理想だよね。
美しすぎて、嘘がある。
現実は、そんなふうにはいかないもの。
私はうつむき、言い訳でもするかのように、つぶやいた。
「だって、あんなことされたら、信じられない、から」
桜田さんが、大きな息をついた。
『信じられないって言うより、信じたくないんでしょ。
あのねぇ、さっきから言ってることは全部、立花さんの都合というか、あなたが傷つきたくなかったってだけでしょ。
翔は、そうまでしなければならないほど、追いつめられているって考えないのかしら?
翔がやったのを見たって子も、おもしろ半分で言ってるだけかもしれないじゃない。
そんな噂とも言えるような言葉を信じるの?
立花さんはただ、自分がかわいいだけなのよ』
言葉の所々に、私をバカにしたような含みがあって、私も何だか頭に来た。
「そういうわけじゃない。桜田さんがやられたわけじゃないんだから、私の気持ちなんてわからないでしょ」
『ええ、わからないわ。何せ立花さんの今の思考は、悪い方向で女の子らしいもの。私じゃ、そんな女の子できないわ』
「桜田さんだって女の子でしょ」
自分で言ったけど、桜田さんは普通の女の子とは全然違う。
自分だけじゃなく、皆を守れるぐらい強くて、しっかりしている。
強い…。
桜田さんはカフェテリアのドアに向かって、歩いていく。
『全く、バカバカしくて付き合ってられないわ。ちょっと調査があるから、私はここで抜けさせてもらうわね』
私の脳裏には、若武たちから聞いた不良をボコボコにする桜田さんのイメージと、フランスでのおびえた様子の桜田さんが浮かんでいた。
それでつい桜田さんの後ろ姿に、叫んでしまっていた。
「桜田さんにはわからないよっ、[バケモノ]にはっ!!」
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きょっちー(プロフ) - シーエル目つぶしさん» コメントありがとうございます!トップ3なんて…本当に嬉しくて、私もベッド蹴って壁殴りましたwwテスト期間も終わり、やっと更新できて、私も嬉しいです。これからも頑張って、トップを目指します!これからもよろしくお願い致します! (2020年8月6日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
シーエル目つぶし(プロフ) - あの、、、すみません、、、この作品、お気に入りの中でトップ3に入るくらい好きなんですが、めっちゃ更新されてて10秒固まり深呼吸をしてベット蹴って壁殴っちゃったじゃないですか!w (2020年8月6日 21時) (レス) id: 7ab4427546 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 雫さん» ありがとうございます!雫様もテスト、無理をせずに全力を出してきてください。楽しみにしていただいているなか、お休みをもらってすみません。なるべく早く更新できるよう、頑張っていきます! (2020年7月18日 20時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - 私も今期末テスト中です(一緒ですね!)!きょっちーさんが書く物語がとても面白く毎日楽しみにしています^^ これからもっと暑くなるので、熱中症などに気おつけて下さい!もちろん新型コロナウイルスにはもっと気おつけて下さいませ! 応援しております^^ (2020年7月18日 19時) (レス) id: 2ccaeb30df (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 紗奈#さん» ありがとうございます!お待たせしてしまうのは心苦しいですが、頑張ってきます! (2020年7月18日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年6月21日 10時