警察官でした。12

594話 ページ50

「この北森秀雄って、オレ、知ってる。確か、5か月くらい前、新聞の社会面に載った名前だ。製薬会社の社員で、帳簿を操作して会社の製品を持ち出し、それをネットで売って儲けてたんだ。で、逮捕されたんだけど、実刑までは食らわなくて執行猶予。会社の方は、クビになったと思うな」

ふぅん…。全教科で稼ぐだけあるってことね。

「いいぞ」和典がうれしそうな声を出した。

「つながってきたじゃん。会社をクビになったから、秀雄は生活していけなくなって父親の家に転がりこんだんだ。犯罪歴があると、再就職って難しいからさ」

「とすると秀雄は、金に困っているってことだ。アーヤ、書いとけ」

「じゃ美門、これは、どう見る？」

貴和が組んだ両腕をテーブルに乗せ、そこに体重をかけて美門の方に身を乗り出した。

「秀雄の家は、駅まで5分。で、その途中にコンビニがある。さっき秀雄はコンビニで買い物をして、その後、駅まで行き、トイレに寄って家に戻った。ちなみに、このコンビニには、客用のトイレがない」

「マジかよ」

そう言って美門は、クスクス笑った。

「レギュラーなのに、臨時雇いのオレに聞くなって」

しかし凜としたその目には、挑むような光がきらめき始めていた。

「謎解きしろっていうんなら、考えてみるけど。結構、おもしろそうだからさ」

『ふんっ、犬っころが何言ってるのよ』

伸ばされた腕を簡単に避け、私は美門とにらみ合う。

「そこ、やめろ。臨時雇い、突出するんじゃない。オレたちは、探偵ごっこをしてるわけじゃないんだ。KZは地味な調査を積み重ねて、確実に検証する本格的な探偵チームなんだぞ。わかったか。じゃ美門とアーヤ、Aは、今の家の周りの聞きこみ。上杉と小塚は、南町のマンションもしくはアパートを当たるんだ。行け」

了解。

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