警察官でした。12

592話 ページ48

そこから名前と引っ越したことがわかり、郵便局の転送期間からその引っ越しが1年以内であることがわかる。

「秀雄の旧住所には、枝番がついてるから、一戸建てじゃない。マンションかアパートだ。何か事情があって秀雄は、父親の住むあの家に引っ越してきたんだ」

そう言いながら貴和は、艶やかな感じのするその目に、いつになく厳しい光をまたたかせた。

「同居の理由はわからないが、それまで一緒にいなかった親子が、ある程度の年齢になって突然、同居すると、うまくいかないことが多い。お互いに自分のライフスタイルができ上がってしまっていて、それを譲らないからね」

『そこから、ある行動につながることがある』

私たちの話をいまいちわかってない様子の皆に、貴和はいらだったように見回した。

「オレたちが何を考えているのか、わかる？」

皆は顔を見合わせるが、口を開くことはなく、貴和はもどかしいといわんばかりの早口になった。

「秀雄は、行きもしない病院に行くと言った。オレたちを追いはらいたかったんだろうけれど、もう一つ、父親に会わせたくなかったってことも考えられる。コンビニに行った秀雄は、弁当と缶コーヒーを買った。でも、どっちも1つしか買わなかった」

貴和は声をひそめ、身を乗り出した。

「オレたちが考えているのはね、秀雄が父親を虐.待してるんじゃないかってことだよ。暴.力をふるっているとか、食事を与えてないとか。そうだとしたら、父親は心身ともに傷を受けている。誰にも会わせられないよ」

その話を聞いた皆の目の中には、キラキラとした光が輝き始めていた。

事件であることを確信したのだろう。

「あのハート虫の発生数から考えると、」

和彦が言った。

「あの家の中は、相当、汚いよ」

和典がため息をつく。

「秀雄の服だって、ずいぶん汚なかったぜ。臭かったもん」

「精神的に荒れてて、きちんとした生活ができてないのかもしれない」

和臣がそう言い、きっぱりとした目で皆を見回した。

「虐.待なら、止めなけりゃ。よし、オレたちは、探偵チームKZに戻るぞ。まず虐.待の事実をつかもう。あの家の中で起きていることをはっきりさせるんだ。あの家を見張る。それと、近所に聞きこみをする。たたく音とか悲鳴なんかが響いて、誰かが聞いているかもしれないからな。秀雄の前の住所の近所も当たろう。本人の評判がわかる。見張りは、黒木とオレでやるから、残りの4人は、聞きこみだ」

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