586話 ページ42
「若武ってば、あんなにいばることなかったんじゃない?」
立花さんの言葉に、和彦もうなずいた。
「そうだよ。失礼だよ」
和臣はなにも言わず、美門の後ろ姿をじっとにらんでいる。
それがドアの向こうに消えると、まるで穴の開いた風船のように、クタッとテーブルに顔を伏せた。
「おい、どうしたよ、若武先生」
和典がからかうように言った。
「再度のダウンの原因は、何だ?」
鼻で笑われて、和臣はくやしそうにつぶやく。
「あいつ、オレのトラウマ。小学2年の時、ダンスの全国大会で最終までいって、そこであいつに負けたんだ。それでオレ、ダンスやめた。あんなうまいヤツが同い年でいたら、オレ、絶対ダメだって思ってさ。あきらめたんだ」
ふぅん、そんなことがあったのね。
「タスクも、ダンスやめたみたいだよ」
同情したような立花さんの言葉に、和臣は、いきなり体を起こした。
「じゃオレ、復帰しようかな」
お早い回復ね。
「美門を、KZに入れたら、どうよ」
和典がそう言った。
「ん、入れよう」
和彦も言った。
しかし和臣は、きっぱりと首を横に振った。
「ダメだ。KZは今、メンバーを募集していないし、それに」
和臣のその声に重ねるように、貴和が言った。
「あいつは、若武より顔がいい。で、ダンスもうまくて頭もいい。つまり、あいつをKZに入れると、」
その先を、皆は、声をそろえていっせいに口にした。
「若武が、目立てないっ!」
皆が顔を見合わせて、どっと笑い転げていると、和臣が立ち上がった。
「オレ、帰る・・・」
和臣の顔は、まともにショックを受けたらしく、ションボリとしていた。
出入り口のほうに歩いていく和臣の背中に、和典が言った。
「おい、また擬態か。2度目は、冗談にならないぜ」
和臣は、クルッとこちらを振り返る。
「社会奉仕団KZは、来週の土曜日スタートだ。各自、老人を慰める方法を考えておくこと。ハイグレードなやつをだ。黒木は、市内の老人家庭の名簿を手に入れてくれ。集合場所は、後で連絡する」
そう言ってから、その目にくやしそうな光をきらめかせた。
「絶対奉仕活動して、市から表彰されてやる。美門より目立つためには、それしかない」
・・・うまくいかない気がしてきたわ。
※※※
家に帰って、早速パソコンの前に座った貴和に、湯気の立ったマグカップを差し出した。
『お疲れさま、ほどほどにしなさいよ』
80人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きょっちー(プロフ) - シーエル目つぶしさん» コメントありがとうございます!トップ3なんて…本当に嬉しくて、私もベッド蹴って壁殴りましたwwテスト期間も終わり、やっと更新できて、私も嬉しいです。これからも頑張って、トップを目指します!これからもよろしくお願い致します! (2020年8月6日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
シーエル目つぶし(プロフ) - あの、、、すみません、、、この作品、お気に入りの中でトップ3に入るくらい好きなんですが、めっちゃ更新されてて10秒固まり深呼吸をしてベット蹴って壁殴っちゃったじゃないですか!w (2020年8月6日 21時) (レス) id: 7ab4427546 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 雫さん» ありがとうございます!雫様もテスト、無理をせずに全力を出してきてください。楽しみにしていただいているなか、お休みをもらってすみません。なるべく早く更新できるよう、頑張っていきます! (2020年7月18日 20時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - 私も今期末テスト中です(一緒ですね!)!きょっちーさんが書く物語がとても面白く毎日楽しみにしています^^ これからもっと暑くなるので、熱中症などに気おつけて下さい!もちろん新型コロナウイルスにはもっと気おつけて下さいませ! 応援しております^^ (2020年7月18日 19時) (レス) id: 2ccaeb30df (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 紗奈#さん» ありがとうございます!お待たせしてしまうのは心苦しいですが、頑張ってきます! (2020年7月18日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きょっちー | 作成日時:2020年6月21日 10時