579話途中まで彩Side ページ35
ああ、悪臭のそばに寄った時なんか、悲惨かも。
そう思いながら私は、翼に向かってニッコリした。
「でも」
翼を励ましたかったんだ。
「それでも、人ができないことをできるのは、すごいと思う。それを生かすチャンスだって、今にきっと来るよ」
すると翼は、そのきれいな目でじっと私を見つめて、くすっと笑った。
「おまえ、結構いいヤツだよな。そういう言葉、聞くのは2回目だよ」
私は、何と答えていいのかわからなくって、あわてて言った。
「じゃ、もう行くから」
翼は、ゆっくりとうなずいた。
「ああ」
そう言ってから長いまつ毛を伏せたんだけど、その顔にはまだ微笑みが残っていた。
「また、な」
※※※
ASide
今、私と貴和は伝言役として、秀明の玄関前で立花さんを待っていた。
周りの女の子たちの声が、かすかに聞こえてくる。
「ね、時間ギリギリまで、ここで見てようよ」
「カッコいいよねぇ。超、脚長い」
「目が素敵。すっごくきれいだもん」
「私、口元がいい。形よくて、清潔な感じがして、それでいてちょっと大胆なムードがあって、たまんない」
「あいつって、どことなくアブない感じがするじゃん。知らない世界を教えてもらえそうで、ドキンドキンしちゃう」
そんな言葉に、つい口元が緩んでしまう。
「バレンタインにチョコレート断ったの、やっぱり桜田さんがいるからかな」
「そうなんじゃない。桜田さん髪切ったから、てっきり別れたのかと思ったけど、手繋いでるし違ったんだね」
そんな女の子たちの向こうに、立花さんの姿が見えた。
貴和の手を軽く握って、立花さんの方を指さす。
しかし立花さんは急に走りだし、そのまま行ってしまった。
『まったく、まだ逃げ回ってるのね。さっさと諦めちゃえばいいのに』
「まぁ、伝えないわけにはいかないし、行こう」
先回りして、立花さんのクラスの教室に行く。
立花さんがやって来たところで、貴和とドアの方へ向かう。
「なんのまね?玄関で待ってたんだけど、ね」
よっぽど必死に走ってきたのか、立花さんはだいぶ息が乱れている。
「無視って、どういうことかな」
何も答えない様子に、貴和がしかたなさそうに目を伏せた。
「今日の休み時間に、カフェテリアに集合だって」
それだけ言って、貴和は立花さんの脇を通りぬけた。
どうせ教室は隣なので、私もその後を追った。
しかし貴和は教室に入らず、カギが壊れているという物置に入っていった。
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きょっちー(プロフ) - シーエル目つぶしさん» コメントありがとうございます!トップ3なんて…本当に嬉しくて、私もベッド蹴って壁殴りましたwwテスト期間も終わり、やっと更新できて、私も嬉しいです。これからも頑張って、トップを目指します!これからもよろしくお願い致します! (2020年8月6日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
シーエル目つぶし(プロフ) - あの、、、すみません、、、この作品、お気に入りの中でトップ3に入るくらい好きなんですが、めっちゃ更新されてて10秒固まり深呼吸をしてベット蹴って壁殴っちゃったじゃないですか!w (2020年8月6日 21時) (レス) id: 7ab4427546 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 雫さん» ありがとうございます!雫様もテスト、無理をせずに全力を出してきてください。楽しみにしていただいているなか、お休みをもらってすみません。なるべく早く更新できるよう、頑張っていきます! (2020年7月18日 20時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - 私も今期末テスト中です(一緒ですね!)!きょっちーさんが書く物語がとても面白く毎日楽しみにしています^^ これからもっと暑くなるので、熱中症などに気おつけて下さい!もちろん新型コロナウイルスにはもっと気おつけて下さいませ! 応援しております^^ (2020年7月18日 19時) (レス) id: 2ccaeb30df (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 紗奈#さん» ありがとうございます!お待たせしてしまうのは心苦しいですが、頑張ってきます! (2020年7月18日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年6月21日 10時