578話彩Side ページ34
ああ、ぶつかる。
そう思っても、すっと避けていくんだ。
私は、目を見張っていた。
だって、すごいじゃん!
ドアの前で止まって、翼はこちらを振り返った。
「これは、努力してできるようになったわけじゃないから、ほんとの才能」
私は、パチパチと手をたたいた。
「すごいっ!目をつぶってるのに、どうして見えるの」
翼は、ちょっと笑った。「見えてないよ。匂いでわかるんだ」
匂い?
「ここには机がたくさんあるだろ。そこから匂いが出ている。机がない所からは、空気の匂いがする。ドアからは、ドアの匂いがするしね。だから歩ける」
私は、目がまん丸になってしまった。
「匂いって、そんなに細かくわかるもの?」
翼は、肩をすくめた。
「普通はわからないだろ。だがオレにはわかる。だから才能なんだ。試していいよ。オレ、目をつぶっているから、立花、指を立ててみて。その数を減らしたり増やしたりしてみ。何本の指が立っているか、当ててみせるからさ」
私は、半信半疑で、Vサインを出した。
「2本」
それに薬指を加える。
「3本」
驚きながら、手を大きく広げてみた。
「5本」
すごっ!
それで今度は、両手を開いて突き出したんだ。
「10本」
う〜ん、完璧っ!
「どうしてわかるの」
私が聞くと、翼は目を開けた。
「最初に、指1本の匂いを覚えておけば、それが倍になったり、3倍になったりするからさ」
すごい特殊能力だぁ!
「どんなものでもわかるの」
翼は、うなずいた。
「金属でも、宝石でもわかるよ。そういったものは匂わないって言われてるけど、オレには嗅ぎ分けられる。ボールが飛んでくるのもわかるし、つまりボールの臭いが近づいてくるからね、箱を見れば、何が入っているかもわかる。かすかに匂ってくるからさ。空中を飛んでる花粉の量や、PM2.5も臭いで感知する」
人間感知器っ!
「さっきも言ったけど、それ、オレの才能な」
そう言いながら翼は、大きなため息をついた。
「でも、こんな才能なんて、何の役にも立たないよ。これを使ってできることっていったら、ワインのテイスティングか、香水の調香ぐらいでしょ」
まぁ、それはそうだよね。
「オレ、興味ないし。つまんない才能だよ」
投げ出すような言い方だった。
「これで得したことって、一度もないし」
そう言いながら親指を立てて、形のいい鼻の先をこすった。
「逆に、感じすぎて困る」
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きょっちー(プロフ) - シーエル目つぶしさん» コメントありがとうございます!トップ3なんて…本当に嬉しくて、私もベッド蹴って壁殴りましたwwテスト期間も終わり、やっと更新できて、私も嬉しいです。これからも頑張って、トップを目指します!これからもよろしくお願い致します! (2020年8月6日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
シーエル目つぶし(プロフ) - あの、、、すみません、、、この作品、お気に入りの中でトップ3に入るくらい好きなんですが、めっちゃ更新されてて10秒固まり深呼吸をしてベット蹴って壁殴っちゃったじゃないですか!w (2020年8月6日 21時) (レス) id: 7ab4427546 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 雫さん» ありがとうございます!雫様もテスト、無理をせずに全力を出してきてください。楽しみにしていただいているなか、お休みをもらってすみません。なるべく早く更新できるよう、頑張っていきます! (2020年7月18日 20時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - 私も今期末テスト中です(一緒ですね!)!きょっちーさんが書く物語がとても面白く毎日楽しみにしています^^ これからもっと暑くなるので、熱中症などに気おつけて下さい!もちろん新型コロナウイルスにはもっと気おつけて下さいませ! 応援しております^^ (2020年7月18日 19時) (レス) id: 2ccaeb30df (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 紗奈#さん» ありがとうございます!お待たせしてしまうのは心苦しいですが、頑張ってきます! (2020年7月18日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年6月21日 10時