警察官でした。12

572話彩Side ページ28

体育系でいうと、サッカーとかバスケとか陸上とか、各種目ごとに誰がエースで、その子を含んで誰までがトップグループとか、だいたい決まってたんだ。

だから転校してきた子に、地位を脅かされたくなかったみたい。

その翌日は、朝から体育の時間で、バレーボールの練習だった。

各クラス対抗のバレーボール大会が、次の週だったから。

女子と男子に分かれて、それぞれの場所でサーブしたり、レシーブしたりしていたら、男子のコートから、

「すげぇっ！」

って声が上がって、私たち女子がいっせいにそっちを見ると、ボールがものすごい音を立ててコートにたたきつけられて、その向こうで翼がトンと着地するところだった。

髪が空中で乱れて、それがサラッと落ちてきて目の上や頬にかかって、すごくカッコよかった。

きれいだったし。

「おお美門、おまえ、ナイス・アタックだなぁ。もう一回、皆に見せてやってくれ」

先生がそう言って、こっちのコートからトスを上げた。

翼は、少し下がってからネット際に走り寄りながら、高く飛び上がって、背筋を弓なりにそりかえらせたかと思うと、上げた手で、目の前のボールを一気にコートにたたき落としたんだ。

ボールは、一直線にコートに突き刺さった。

そして本人は、涼しい顔で、トンと着地。ほとんど音がしないくらい、軽やかだった。

男子が、またいっせいに、

「すげぇ！」

と言った。

今度は、女子もそう言ったんだけれどね。

それだけじゃなくて、レシーブもすごい。

どんなボールの下にも飛びこんでいって、必ず受ける。

そしてポーンと、気持ちいいくらい高く上がるんだ。

それに、サーブも弾丸。

軽く打ってるみたいに見えるのに、回転がかかっていて、ドスンとコートに沈んで、誰も手が出ない。

教室では無口ではかなげなのに、コートでは熱くてアグレッシブで、男子の尊敬も、女子のハートも鷲づかみっ！

翌週のバレーボール大会では、うちのクラスのエースアタッカーとして、打って、拾って、また打って、と大活躍。

私たちのクラスを優勝に導いてくれた。

私たちは、男子も女子も、もうタスク、タスクの大コールっ！その時から、美貌の美門じゃなくて、ただの翼って呼ばれるようになったんだ。

バレー部に勧誘されたって話を聞いたけれど、なぜか入部せずにバスケ部に入ったらしい。

でも、それもすごいよ。

だって、うちのバスケ部は結構強くて、県大会とかに行くんだもの。

573話彩Side→←571話彩Side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す