565話 ページ21
直後、カタカタッと音がして、銀行の名前を書いたシャッターが上がり始めた。
それをくぐって、何度か見た30歳前後のメガネの男が現れた。
手には、ジュラルミンのケースを持っている。
間違いない、片桐だ。
「お疲れ様です」
片桐は、現金輸送車から降りてきた警備員たちと挨拶を交わし、ジュラルミンのケースを渡そうとした。
瞬間、和臣の声が響く。
「上杉、行くぞっ!」
2人は裏口に突入、まだ上がりきっていないシャッターをくぐってその奥に駆けこんだ。
驚く片桐や警備員の前に、翔と貴和、私が立ちふさがる。
私は片桐に歩み寄り、足払いをして倒した。
見上げてくる片桐を前にウィッグを外し、その目を射抜くように見つめる。
『大人が子どもに示す道は、明るく正しい道であるべきなのよ。それを、私欲のために暗く曲がった道に誘いこむなんて…』
小野塚くんは一度だけ、子どもの笑顔を私に見せた。
襲撃作戦会議の時、コーラの缶を差し出してくれた。
彼だって、大人に守られるべき子どもなのだ。
『そんなヤツ、大人でもなんでもない、人でなしよっ!ブタ箱でその根性、叩き直してもらうのねっ!』
遠くから、サイレンの音が聞こえた。
※※※
今、私たちは警察署にいる。
…銀行強盗の容疑者として。
警察が来た時、ちょうど和臣たちが本物のジュラルミンケースを持ち出したところで、勘違いされてしまったのだ。
しかしその容疑は事情聴取であっさりと晴れ、私も解放され、一足早く解放された和臣たちの待つロビーに歩いてきたところ。
『お待たせ』
「ああ、お疲れ」
和臣はソファに座りながら、すっかりしょげてしまっている。
和典が私の肩に腕をのせ、顔をのぞきこんできた。
「で、今回おまえは単独行動だったわけだが、説明はしてくれるんだよな」
『ええ、それはもちろん、させてもらうわ』
「じゃあその前に一つ聞くぞ。ケガはしてないよな」
『もちろん。私を誰だと思ってるのよ』
和典はニヤリと笑い、視線を後ろに流した。
「だとよ、彼氏サン」
後ろには貴和がうつ向いて立っていて、何だか空気が怒ってる…?
顔を上げた貴和は、やはり怒ってる時の笑顔。
「ケガはない、ね。そっか、Aにとって、火傷はケガじゃないんだな」
『…まさか』
「砂原から聞いたよ。【姉貴、左腕に根性焼き5回】ってさ」
…逃げたいけど、逃げたらヤバいやつ…。
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きょっちー(プロフ) - シーエル目つぶしさん» コメントありがとうございます!トップ3なんて…本当に嬉しくて、私もベッド蹴って壁殴りましたwwテスト期間も終わり、やっと更新できて、私も嬉しいです。これからも頑張って、トップを目指します!これからもよろしくお願い致します! (2020年8月6日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
シーエル目つぶし(プロフ) - あの、、、すみません、、、この作品、お気に入りの中でトップ3に入るくらい好きなんですが、めっちゃ更新されてて10秒固まり深呼吸をしてベット蹴って壁殴っちゃったじゃないですか!w (2020年8月6日 21時) (レス) id: 7ab4427546 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 雫さん» ありがとうございます!雫様もテスト、無理をせずに全力を出してきてください。楽しみにしていただいているなか、お休みをもらってすみません。なるべく早く更新できるよう、頑張っていきます! (2020年7月18日 20時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - 私も今期末テスト中です(一緒ですね!)!きょっちーさんが書く物語がとても面白く毎日楽しみにしています^^ これからもっと暑くなるので、熱中症などに気おつけて下さい!もちろん新型コロナウイルスにはもっと気おつけて下さいませ! 応援しております^^ (2020年7月18日 19時) (レス) id: 2ccaeb30df (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 紗奈#さん» ありがとうございます!お待たせしてしまうのは心苦しいですが、頑張ってきます! (2020年7月18日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年6月21日 10時