563話 ページ19
小野塚くんは、顔を強張らせて和臣を見つめている。
和臣は、さも気の毒そうな顔で、それをじっと見つめ返していた。
「おまえさ、その京浜銀行の片桐ってヤツに、あやつられてんだよ。何ていってもオレたちは、まだ子どもだろ。大人の悪にかかったら、ひとたまりもねぇよな。それにおまえって、基本的には、いいヤツだからさ。利用されてるってことだろ」
瞬間、小野塚くんは、飛びつくように和臣の両腕をつかんだ。
「そうだよ。ボクは利用されたんだ。何もかもボクのせいじゃないんだよ。振りこめ詐欺だって、電話番号やキャッシュカードを用意したのは、片桐なんだから。そそのかされたんだ、[出し子]を集めたくれたら手数料を払うって。ボクは、手伝わされただけなんだよ。ねぇ、どうしたら警察は、それをわかってくれるかな」
和臣は、少し考えた振りをし、それから言った。
「まず片桐を捕まえさせることだな。ヤツを取り調べれば、そのうち振りこめ詐欺もはっきりして、おまえが呼び出されるかもしれないけど、その時は、今みたいに言えばいいんだから。オレも証言してやるよ。おまえは利用されただけだって」
小野塚くんは、何度も首を縦に振った。
「わかった、わかった。よろしく頼むよ」
和臣はニッコリ笑い、それからはっと思いついたように言った。
「じゃこれからオレたちを、片桐のとこに連れてってくんない?襲撃要因ってことでさ。で、片桐が金を隠した所をバッチリ押さえて、警察に連絡するんだ。そうすれば逮捕に協力したってことになって、印象がよくなるから、罪も軽くなるかも」
小野塚くんは、うれしそうに深くうなずいた。
「わかった。行こう」
それを聞いて、和典が脱力したようにつぶやいた。
「あーあ、オチやがった、バカめ…」
和臣は、人の心をあやつる力を持っている。
おだて、脅し、揺さぶり、結局、自分の思い通りに動かしてしまう。
「その角を曲がった先が、京浜銀行だ」
そう言って小野塚くんが自転車を止め、それに続いて皆が、キイッとブレーキの音をさせた。
私も、新庄誠也の姿でスケボーを止めた。
「裏口が、ここ」
道路に面したそこには、銀行の名前を書いたシャッターが下りていた。
隣は駐車場で、車は、2、3台停まっているだけだ。
「自転車は、その駐車場に入れて。銀行のだから」
皆が駐車場に自転車を止めていると、小野塚くんは、ポケットから目出し帽を出して被った。
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きょっちー(プロフ) - シーエル目つぶしさん» コメントありがとうございます!トップ3なんて…本当に嬉しくて、私もベッド蹴って壁殴りましたwwテスト期間も終わり、やっと更新できて、私も嬉しいです。これからも頑張って、トップを目指します!これからもよろしくお願い致します! (2020年8月6日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
シーエル目つぶし(プロフ) - あの、、、すみません、、、この作品、お気に入りの中でトップ3に入るくらい好きなんですが、めっちゃ更新されてて10秒固まり深呼吸をしてベット蹴って壁殴っちゃったじゃないですか!w (2020年8月6日 21時) (レス) id: 7ab4427546 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 雫さん» ありがとうございます!雫様もテスト、無理をせずに全力を出してきてください。楽しみにしていただいているなか、お休みをもらってすみません。なるべく早く更新できるよう、頑張っていきます! (2020年7月18日 20時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - 私も今期末テスト中です(一緒ですね!)!きょっちーさんが書く物語がとても面白く毎日楽しみにしています^^ これからもっと暑くなるので、熱中症などに気おつけて下さい!もちろん新型コロナウイルスにはもっと気おつけて下さいませ! 応援しております^^ (2020年7月18日 19時) (レス) id: 2ccaeb30df (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 紗奈#さん» ありがとうございます!お待たせしてしまうのは心苦しいですが、頑張ってきます! (2020年7月18日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年6月21日 10時