561話 ページ17
「銀行内部にいる共犯者は、そうやって時間を稼いでおいて、警察が気付く前に、姿をくらますつもりなんだ。
たぶん銀行を辞めるんだろ。
砂原、今日ジュラルミンケースを運ぶ2人の職員の内の1人は、そいつだよな」
翔は、うなずいた。
「そいつが警備員の目を引きつけておけば、たとえ小野塚1人でも、ケースを壊すぐらいはできるってことだろ」
「ケースを運ぶ2人の職員は、当番制だよな」
翔は、またもうなずく。
不思議そうにしている立花さんには、私が補足した。
『いつも同じ人間にお金を運ばせるのは、犯罪につながりやすいのよ。銀行は、そういうところにすごく神経を遣ってるわ。お金を扱う商売だからね。職員の仕事内容も始終、替えたり、部署を移動させたりして、同じ仕事に長く携わらせないようにしているのよ』
「だから共犯者は、タイムリミットを抱えている。
犯行を行うためには、自分がケース運搬の当番に当たる日でなければならない。
それから犯行後、姿をくらましても不自然に思われないように、事前に退職願いを出しておく必要がある。
普通の場合、退職願いというのは、1か月くらい前に出すものだ。
その1か月の間で、自分がケース運搬に当たるのは、たぶん今日しかないんだ。
それが、どうしても今日やらなければならない理由だろ?」
翔は、敬服したように首を横に振った。
「ご名答」
さっすが、貴和よね。
和典がつぶやく。
「銀行内部に共犯者がいれば、振りこめ詐欺に使う口座も、作りやすいよな」
和彦も言った。
「銀行なら、顧客の情報を持っている。そこから電話番号をピックアップして、振りこめ詐欺の電話をかけるのは簡単なことだよね」
いくつものピースが組み合わさって、1枚の絵になっていっている。
翔が、携帯電話を差し出す。
「ジュラルミンケースを持った職員2人は、建物内から庭を通って裏口に出る。これが、その経路」
それには、敷地内の俯瞰図が描かれ、点線で職員の歩く道が示されている。
「途中に、文書を保存するための書庫がある。
ここだ。
普段は鍵がかかっているんだが、それをあらかじめ開けておき、ジュラルミンケースを中に運びこむ。
ここにいったん現金を隠しておいて、後で持ち出す計画なんだ」
「ケースを運ぶのは、2人だろ」
和臣がすかさず言った。
「1人は共犯者本人だからいいとして、もう1人は、どうすんだ?」
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きょっちー(プロフ) - シーエル目つぶしさん» コメントありがとうございます!トップ3なんて…本当に嬉しくて、私もベッド蹴って壁殴りましたwwテスト期間も終わり、やっと更新できて、私も嬉しいです。これからも頑張って、トップを目指します!これからもよろしくお願い致します! (2020年8月6日 22時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
シーエル目つぶし(プロフ) - あの、、、すみません、、、この作品、お気に入りの中でトップ3に入るくらい好きなんですが、めっちゃ更新されてて10秒固まり深呼吸をしてベット蹴って壁殴っちゃったじゃないですか!w (2020年8月6日 21時) (レス) id: 7ab4427546 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 雫さん» ありがとうございます!雫様もテスト、無理をせずに全力を出してきてください。楽しみにしていただいているなか、お休みをもらってすみません。なるべく早く更新できるよう、頑張っていきます! (2020年7月18日 20時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - 私も今期末テスト中です(一緒ですね!)!きょっちーさんが書く物語がとても面白く毎日楽しみにしています^^ これからもっと暑くなるので、熱中症などに気おつけて下さい!もちろん新型コロナウイルスにはもっと気おつけて下さいませ! 応援しております^^ (2020年7月18日 19時) (レス) id: 2ccaeb30df (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 紗奈#さん» ありがとうございます!お待たせしてしまうのは心苦しいですが、頑張ってきます! (2020年7月18日 15時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年6月21日 10時