警察官でした。12

556話彩side ページ12

「いいのかよ、砂原。
おまえだって、ボクの下に入ってから、相当、手を汚してるだろ。
振りこめ詐欺の[出し子]もやったはずだし、テストの中には、強請をしろってのも、あったはずだ。
おまえ、それ、やったんじゃないのか。
ボクのとこに、金、持ってきたもんな。
まぁ、おまえにやらせたのは、たいした金額のものじゃなかったけどさ、それでもいちお犯罪だろ」

ああ砂原、まずいじゃん。

「おまえがボクを警察に通報したら、ボクは、それ全部、吐いてやるぞ。おまえを道連れにしてやるからな」

瞬間、砂原は、カッと目を見開いた。

「小野塚、オレをナメんなよ。オレはなぁ、初めっからおまえをシメるために近づいたんだ。そのために、好きな女まで泣かせたし、姉貴だって傷つけたんだよ」

その目には、凄まじい怒りと、恨みが渦巻いていた。

姉貴って…、桜田さん？

「そこまでしたってのに、手抜かりなんかするかっ！
おまえに持っていった金は、[出し子]の分も、強請の分も全部、オレの金だ。
口座からいったん引き出して、おまえに渡して、その後、リストにあった振りこみ口座に同額を戻しといたんだ。
強請のほうは、まるっきりしてない。
度胸試しのために、誰でもいいから襲って金を盗れって言われた時も、オレは手を出さなかった。
ただ投げられた財布を拾っただけだ。
吸ってたタバコも、オレの姉貴が作ってくれた偽物だ。
法には触れてねーよ」

小野塚は、くやしそうに頬をゆがめた。

「ちきしょう」

砂原の、完全勝利だった。

私がほっとしていると、砂原は、小野塚を見すえてわずかに笑った。

「オレは、600万もらえれば、それで消えるよ。これからおまえがしようとしてることになんか興味ねーし、じゃまもしやしない。さっさとここをすませて、最強の不良たちを連れて仕事にはげむんだな。それが利口ってもんだろ」

小野塚は、しかたなさそうに携帯を出し、その画面を操作し始めた。

砂原は、じっとそれを見ている。

その後ろで、チラッと動く影があった。

頭が、4つある。

あ、若武たちが来たっ！

私は、そう思って、手を振りそうになった。

ところが、忍び寄るように砂原の背後に近づいてきたそれらは、私がチョコレートを渡しに行った時、美音の家に向かう道でタバコを吸っていた不良たちだった。

砂原は、気付かない。

私は、真っ青になった。

だっていくら砂原だって、4人に一気に襲われたら、どうしようもない。

557話彩side→←555話彩side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す