警察官でした。12

546話 ページ2

「その時、KZ幼年部のチビどもがいて、若武が指導をしてたんだ。
で、若武は、爆発からチビたちをかばって火傷した。今も背中に、すごい跡があるよ」

そんなことが…。

「小野塚は、さっさと逃げ出して、まるっきり無事。
その場に火が燃え広がって、皆が消火活動に回ってたんだけど、それにも参加せずに、バーベキューの肉食ってたな。
その後、事故の調査が始まると、自分は間違わなかった、カセットボンベに欠陥があったに決まってると言い張って、絶対に非を認めなかった。
しばらくしてカセットボンベの会社から、製品に不備はなかったと調査結果が出されて、KZ幼年部の子が、火を止めずにボンベを交換する小野塚を見ていたってことが明らかになったんだけど、小野塚は自分の正しさを主張するばっかり。
そして、すべての責任は現場を取り仕切っていたリーダーにあるはずだ。
リーダーさえしっかりしていたら、こんなことにはならなかったと言い出してさ。
その時のリーダーってのが、上杉だったんだ」

だから和典も一緒に熱くなってるのね。

「そのことだけじゃなくて、他にもいろいろと事件があった。それですっかり皆から軽蔑されたんだ。KZの連中は皆、鋭いし、プライドも高いからね。卑怯なヤツなんか、絶対に許さない。それで小野塚はKZにいづらくなったらしくて、辞めたんだ」

そう言って貴和は、一瞬、空中を見つめた。

「一度、話したことがあるんだけど、小野塚の心の中には、妙な幻想があるみたいだったな。
自分は完璧で、皆から尊敬されて、あらゆる人間の上に立って、それが当たり前だっていう幻想、どういうわけかそう思いこんでるんだ。
根拠のないその自信が、どこからきてるのかわからないけど。
だから現実が見えてきて、自分の幻想が傷つけられたり、満たされなくなったりすると、すぐに逃げ出すんだ。
そして自分をそんな目に合わせた人間を、逆恨みする。
すべては、そいつのせいだって考えるらしい。
それで上杉先生なんて、ずっと標的にされてたんだ。
だけど、いくら小野塚が攻撃しても、皆はそうは思ってないから相手にしないだろ。
むしろ逆に、上杉をかばう。
それに成績では、どうしても上杉を追い越せなかった。
そんなことが続いて、小野塚は秀明を辞めたんだ。
その後のことは、厳然聞いてないけど、あの性格は簡単には変わらないと思うよ。
だからアーヤからの話を聞いて、ふっと思ったんだ」

そこで一旦言葉を切り、貴和は、和臣と和典の方を見た。

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