警察官でした。〜探偵たちの鎮魂歌〜

48話 ページ48

服部が手をすべらせ、和葉のIDが後ろの席に飛んでいく。

「よしっ！」

若武が見事IDを両手でキャッチした。

が、すぐに車両は巨大ループに突入し、一回転した若武が両手を見ると、IDがなくなっていた。

「どこいった？！」

『後ろよ！』

Aが振り返ると、後ろの車両の座席にIDが引っかかっていた。

エリア外に近づいていることを知らせる赤いランプが点滅している。

Aは安全バーを破壊しようと、全力でバーを蹴った。

KZのメンバーと服部がAを見守る。

「いっけぇぇぇ！」

安全バーを持っていた上杉がハッと気づいた。

「ダメだ！黒木、やめさせろ！」

黒木も安全バーがゆるくなっていることに気づいた。

「ダメだ！この安全バーは全部連動してる！一つ壊したら…！」

『みんなのバーまで？！』

Aは安全バーを蹴るのをやめ、後ろの車両を振り返った。

エリア外を警告する赤いランプが激しく点滅している。

車両は巨大なループに差しかかった。

一回転したその先は、海の上だ。

そのとき、上空から伸びた手が座席に引っかかったIDをつかんだ。

『あ…！』

それはカイトで飛行する怪盗キッドだった。

Aを見てフッと微笑む。

純白のカイトが急上昇して小さくなったかと思うと、大音響と共に爆発が起こり、まるで花火のような光を放った。

海上を飛び出し、最後のカーブを曲がった車両はスピードをゆるめた。

「もぉ最高！」

「まさか花火まで見れるなんてなぁ！」

何も知らない園子と和葉は満悦の表情を浮かべるが、他の者は緊張から解き放たれげっそりとしている。

車両から降りた服部は小さくなっていくキッドのカイトを見つめた。

「何でアイツ、ここに…」

『捜査中から私たちと一緒にいたからよ。一緒にバイクに追いかけられたじゃない？』

「え…？」

Aの言葉に、服部は目を見張った。

純白のカイトを広げて夜空を優雅に飛ぶキッドは、足元に広がる海を見下ろした。

真っ暗な海の上に、青白くライトアップされたミラクルランドとレッドキャッスルがぼんやりと浮かんでいる。

キッドは不敵な笑みを浮かべるとカイトを急上昇させ、やがて星が瞬く夜空に消えていった。

※※※※

翌日、テレビでは伊東末彦と清水麗子が逮捕されたというニュースが流れた。

探偵の竜も大金を積まれ死.んだフリをしていたことにより、爆破事件に関与していたと見なされ連行された。

49話→←47話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す