538話彩side ページ44
「お」
そばまで行くと、そこには6、7人がいて、中の1人が私に気付き、皆に視線を回した。
「お客さんだぜ」
それは、コンビニの隣でタバコを吸っていた、あの眉毛ナシだった。
私は足がすくんでしまいそうだったけれど、頑張ってそっちを見ないようにした。
相手にしないってふりで、さっさと通り過ぎたんだ。
瞬間、後ろから、グイッと二の腕をつかまれた。
ドキッとして振り返ると、そこに砂原がいた。
「何の、用だよ」
もう一方の手の、きれいな指の間には、火のついたタバコが揺れていた。
ここで、一緒に吸ってたんだ。
そうわかって、私は急に悲しくなった。
やっぱり砂原は、もう昔の砂原じゃないんだって気がしたから。
「来るなって言っただろ」
砂原は、こっちをにらみ下ろした。
2つのその瞳は、激しい怒りで震えていた。
それほど怒っている人を、私は今まで1度も見たことがなく、体がすくんでしまった。
確かに、もう近寄るなって言われてたのを無視したんだから、怒らないわけはないけれど…。
「キレるなよ、砂原」
不良の1人がそう言い、持っていたタバコを夜行灯にこすりつけて消すと、私に歩み寄ってきた。
「かわいいじゃん」
それは、太って、丸い顔をした中3くらいの子だった。
頬がふっくらしているせいで穏やかそうに見えたけれど、細い目には鋭い光がある。
その目で私をながめ回し、油断なく様子をうかがっている感じで、とてもいやな雰囲気だった。
「ほらぁ、せっかくチョコ持ってきてくれたんだからさ」
そう言うなり、そいつは、私の手からさっとチョコレートを奪いとった。
私は、あわててその手に飛びついたけれど、そいつの太ったお腹がじゃまして、チョコレートまで届かなかった。
「返してよ」
抗議すると、そいつは、おやっというような表情になった。
まるで、自分が何もしてないのに、私が過剰反応しているかのような、顔つきだった。
そして、幼稚園児に言うみたいに、ゆっくりと言ったんだ。
「砂原にやるんだろ。大丈夫だよ。オレは、やさしいんだ。盗りゃしない。ちゃんと渡してやるからさ」
その時、そいつの後ろから腕が伸びてきて、そいつの肩を抱いた。
「まあまあ、小野塚さん。ここは恋する乙女に、直接渡させてあげようよ。せっかくここまで来たみたいだしさ」
新しく来たその不良は、一見すればすごくカッコいいけど、髪は上だけ銀髪だし、耳にはいっぱいピアスが付いていた。
539話彩sideから翔side→←537話翔sideから彩side
73人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
華菜原 舞衣 - うわっ48分前っありがとうございます!楽しみにしてます。 (2020年5月27日 12時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 華菜原 舞衣さん» コメントありがとうございます!前世ユズリ…お仕事でやっていたんです。前世譲りの知識やテクはこれからも登場します。楽しみにしていてくださいね! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ひーとさん» コメントありがとうございます!これからは黒木くんの謎がさらに深まるのか、夢主ちゃんが過去を話す日は来るのか、ご注目ください。これからもよろしくお願いします! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
華菜原 舞衣 - 夢主の前世ゆずりのテクって・・・前世でもやってたってこと!?オソルベシ・・・更新、楽しみにしてます。がんばってください。 (2020年5月27日 10時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
ひーと - 黒木くんの過去が良い感じに仲を深めましたね〜。めっさキュンキュンします。此れからも楽しみにしています。更新大変だと思いますが、頑張ってください! (2020年5月26日 1時) (レス) id: c8f6957e50 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きょっちー | 作成日時:2020年5月20日 19時