522話途中から貴和side ページ28
顔の前まで上げて見ると、私の血とおそらくあいつらの血にまみれていた。
白いセーターも、所々赤く染まっている。
「おまえ、1人であいつらを倒したんだよ。過剰防衛になるくらいでな」
…そっか、貴和の血を見て正気を失ってたのか。
『ごめんなさい、頭に血が上っちゃったみたい。小塚くんも、怖がらせちゃったわね』
しかし小塚くんは、笑顔で首を横に振った。
「ううん、大丈夫。覚えてないだろうけど、あいつらの1人がボクにも殴りかかってきたんだ。でも桜田が走ってきて助けてくれんだよ。だから、やっぱり桜田なんだって思って、怖くはなかったよ」
…私の本質を見てくれてるのね。
『ありがとう、和彦』
和彦は一瞬驚いて、今度は嬉しそうに笑った。
「こちらこそ、守ってくれてありがとう。A」
それを微笑ましげに見ていた貴和だが、難しい顔になって押し殺した声で言う。
「観戦メンバーの顔、見えたヤツいる?」
その言葉に、全員が黙りこんだ。
それが示す答えは1つ。
「砂原、あいつ…」
和臣はそう言った切り黙り、放り出されていたカバンを拾って再び口を開いた。
「今は解散しよう。上杉への連絡はオレがしておく。とにかく明日、全員がそろってからだ」
うなずき、傍にいた貴和の腕をつかんで家の方へ歩いた。
※※※
貴和side
家に着いたらオレは部屋で待たされ、Aは救急箱を持ってきた。
ベッドに座っているオレの顔の傷を、真顔に無言で手当てしていく。
しかしその手つきは、オレが痛くないように少し遠慮がちだ。
手当てが終わって使った道具を箱に戻したAは、オレに紅茶を差し出してきた。
いつもより少し苦い。
オレが飲みきったカップを置くのを見て、Aが胸に倒れこんできた。
オレも一切の抵抗なく、素直に押し倒される。
Aはしばらくそのままだったが、不意にオレのTシャツの胸元を強く握った。
絞り出すような、おそらく口にしようとしたわけではなく、勝手にもれているのだろう声が聞こえてくる。
『悔しいっ…!守れなかった、もっとちゃんと気を付けていれば…!』
大丈夫の意をこめて、Aの頭をなでる。
Aは顔を上げて、オレの額にその額を当てた。
その体温に当てられたのか、だんだん眠くなってくる。
『あのグループは必ず壊滅させる。だから、今は眠ってて』
その声を最後に、オレの意識は途切れた。
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華菜原 舞衣 - うわっ48分前っありがとうございます!楽しみにしてます。 (2020年5月27日 12時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 華菜原 舞衣さん» コメントありがとうございます!前世ユズリ…お仕事でやっていたんです。前世譲りの知識やテクはこれからも登場します。楽しみにしていてくださいね! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ひーとさん» コメントありがとうございます!これからは黒木くんの謎がさらに深まるのか、夢主ちゃんが過去を話す日は来るのか、ご注目ください。これからもよろしくお願いします! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
華菜原 舞衣 - 夢主の前世ゆずりのテクって・・・前世でもやってたってこと!?オソルベシ・・・更新、楽しみにしてます。がんばってください。 (2020年5月27日 10時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
ひーと - 黒木くんの過去が良い感じに仲を深めましたね〜。めっさキュンキュンします。此れからも楽しみにしています。更新大変だと思いますが、頑張ってください! (2020年5月26日 1時) (レス) id: c8f6957e50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年5月20日 19時