520話 ページ26
『あいつらがモクの男だったら、って思ってるんでしょ。私、貴和の方にまわるわ。全員がそっちに行けば、さすがの貴和でも無理だろうからね。にしても、あなた何発やったのよ』
貴和は少し笑った。
「まぁ、そこそこ」
その基準は何発なのよ…。
和臣がうなずいた。
「じゃ上杉、アーヤを連れてって。小塚は、オレと来い」
皆が一瞬、あれって顔をした。
まぁ、こういう時一番目立つのは、女の子をかばう男子よねぇ。
まさかこっそり残る気じゃ…。
和臣は、腕を伸ばして和典の肩を抱き寄せ、その耳に何かささやいた。
和典がうなずくのを確認してから、自分のズボンのポケットに手を入れる。
「皆、小銭持ってるか。なけりゃ、貸してやるぞ。オレ、小銭だけはたくさんある」
少し情けなさそうに財布を見た和臣に、皆が笑った。
私も素早くカバンから財布を出して点検する。
立花さんもそれに習おうとしたら、和臣が止めた。
「おまえは、いい」
ムクれた立花さんに、貴和が少し笑った。
「これから、皆で財布を投げるんだ。できるだけ遠くに投げて、そのすきに逃げる。適度な重みがある方がいいし、音もした方がいいから小銭を入れるんだよ」
その後を、和典が続けた。
「立花は、投擲力なさそうだからな。遠くに投げられないと、何の意味もないし」
「あの信号の前まで行ったら、オレがGOサインを出す」
和臣が、小銭を皆に配りながらきびきびと言った。
「そしたら後ろからつけてきているヤツらの頭上を越すように財布を投げて、連中がそれを追っている間に、黒木とAは左、上杉とアーヤは右、オレと小塚は前に走る。じゃまをするヤツがいたら、蹴り倒せ。どこまでも走って逃げ切る。わかったな。安全な所まで逃げたら、連絡を取り合おう」
歩きながら皆がうなずく。
目標地点が近づく。
「ねぇ、これ、どうする?」
小塚くんが、着ていたダウンジャケットの襟を引っぱった。
「寒いけど、走るとなったらじゃまだよね」
瞬間、和典も貴和も一気に、自分のアウターのジッパーを下げた。
私もコートのボタンを外していく。
『脱ぐしかないわよね』
皆、次々と自分の防寒着を脱いで腕にかけた。
誰もが結構、薄着で、特に和典と貴和は、半袖のTシャツだった。
私は白のタートルネックセーターだ。
「脱いだそれ、どうするの」
立花さんに聞かれて、私たちは、少し残念そうに自分のアウターを見た。
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華菜原 舞衣 - うわっ48分前っありがとうございます!楽しみにしてます。 (2020年5月27日 12時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 華菜原 舞衣さん» コメントありがとうございます!前世ユズリ…お仕事でやっていたんです。前世譲りの知識やテクはこれからも登場します。楽しみにしていてくださいね! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ひーとさん» コメントありがとうございます!これからは黒木くんの謎がさらに深まるのか、夢主ちゃんが過去を話す日は来るのか、ご注目ください。これからもよろしくお願いします! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
華菜原 舞衣 - 夢主の前世ゆずりのテクって・・・前世でもやってたってこと!?オソルベシ・・・更新、楽しみにしてます。がんばってください。 (2020年5月27日 10時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
ひーと - 黒木くんの過去が良い感じに仲を深めましたね〜。めっさキュンキュンします。此れからも楽しみにしています。更新大変だと思いますが、頑張ってください! (2020年5月26日 1時) (レス) id: c8f6957e50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年5月20日 19時