499話途中から彩side ページ3
確かに、和臣にとっては、会いたかった人に会えるわけなんだものね。
『そうね。それに、コロンも話の種になるわ。好きな香りを聞いてみたり、逆に薦めてみたりね』
「けどニヤついてると、失敗するぜ」
冷ややかにいった和典の肩を、貴和が抱き寄せた。
「そう怒らない、怒らない。若武先生、どうせ彼女と話すんだったら、それとなく病院や謝罪の話に持ってくんだぜ」
和臣は、大きなため息をついた。
「話も自由にできないのかよ。オレの初恋、かわいそ」
私たちは、クスクス笑った。
「時間だ」
時計を見て、和典がきっぱりと言った。
「行けよ」
和臣はうなずいて全員を見回し、親指を立てた。
「ではKZの諸君、全力をつくしてくれ」
カッコをつけてそう言ってから、立花さんと小塚くんを目でうながす。
「行こう」
2人はうなずいて、武田さんの家に向かっていった。
がんばってね。
※※※
彩side
小塚クンと植木鉢のあったダイニングに入ったが、植木鉢は一つも無くなっている。
私はすっかり動揺し、おろおろと小塚クンを見た。
立花の持ってきた情報に間違いがあったと、思われたくなかった。
そんなことになったら、みんなの信用を失う。
この先、メンバーとしてやっていけなくなるだろう。
目の前が真っ暗になる思いで、私は、ひたすらくり返した。
「ここにあったのに、確かにあったのに」
小塚くんが、床に片膝をつきながら言った。
「落ち着いて、アーヤ。それはわかってるから。だってアーヤのポケットには土がついてたし、葉も入ってたじゃないか。皆、わかってるから大丈夫だよ」
私は、ほっと息をついた。
小塚クンはていねいにあたりを点検し、ポケットからピンセットを出すと、床板の継ぎ目から小さな粒をつまみ出した。
「これ、あの土だ。植木鉢はどこかに移動したんだな」
どこにっ?!
「この家の中だといいけど。でなかったら、写真が撮れない。潜入調査は失敗だ」
探すしかなかった。
「若武のほうは大丈夫だ。ボクがトイレに行くって言ったら、ダブルピースを出してみせた」
ダブルピースって、両手でVサインを出すことだよね。
「あいつ、いつも片手のピースしかしないんだ。ダブルピースだと、立ってる指が4本だから、たぶん40分くらいは、彼女を引き止めておけるってことだと思う」
私は、小塚クンの細かな観察に感心した。
日頃、いろいろなものを注意深く見ているから、観察眼が磨かれているんだよね、きっと。
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華菜原 舞衣 - うわっ48分前っありがとうございます!楽しみにしてます。 (2020年5月27日 12時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 華菜原 舞衣さん» コメントありがとうございます!前世ユズリ…お仕事でやっていたんです。前世譲りの知識やテクはこれからも登場します。楽しみにしていてくださいね! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ひーとさん» コメントありがとうございます!これからは黒木くんの謎がさらに深まるのか、夢主ちゃんが過去を話す日は来るのか、ご注目ください。これからもよろしくお願いします! (2020年5月27日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
華菜原 舞衣 - 夢主の前世ゆずりのテクって・・・前世でもやってたってこと!?オソルベシ・・・更新、楽しみにしてます。がんばってください。 (2020年5月27日 10時) (レス) id: 7aa09cf11b (このIDを非表示/違反報告)
ひーと - 黒木くんの過去が良い感じに仲を深めましたね〜。めっさキュンキュンします。此れからも楽しみにしています。更新大変だと思いますが、頑張ってください! (2020年5月26日 1時) (レス) id: c8f6957e50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年5月20日 19時